2019 Fiscal Year Research-status Report
発がん性複製ストレス応答分子を標的とした新規がん治療法の開発
Project/Area Number |
18K07289
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
関本 隆志 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (20436322)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 複製ストレス / 発がん / c-Myc / G-quadruplex |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトゲノム配列中には、一本鎖DNAがグアニン四重鎖構造(G-quadruplex, G4)と呼ばれる二次構造を形成しうるモチーフ( GGGN1-7 GGGN1-7 GGGN1-7 GGG)が、テロメアやプロモーター領域を中心に37万以上あると推定されている。最近の研究から、G4構造は遺伝子発現やDNA複製、テロメア維持機構などの様々な機能に関与することが報告されており、その異常な形成は神経変性疾患やがんの一因になることが示唆されている。 がん遺伝子誘導性複製ストレス(Oncogene-induced replication stress, OIRS)はDNA損傷を介してゲノム不安定性を促進する一方、細胞の老化・死を引き起こす。したがって、OIRSの仕組みの解明は発がん過程の理解だけでなく治療の開発にも重要である。G4構造は複製フォーク進行を阻害しRSの原因となるが、OIRSにおける役割は明らかではない。そこで本研究では、薬剤添加によりがん遺伝子c-Myc(Myc)を活性化できるモデル細胞系を用いて、OIRSにおけるG4構造の役割を解明することを目的として研究を展開している。 G4を特異的に認識するモノクローナル抗体を用いて核内DNAのG4構造を染色したところ、Myc活性化はS期におけるG4シグナルを増加させ、G4安定化剤Prydostatin(PDS)処理はこのG4シグナルを増強した。また、PDS処理はMycが誘導するDNA二重鎖切断、細胞死を増強した。これらのことから、Myc誘導性RSにG4が関与することが示唆される。興味深いことに、MycによるG4増加は転写阻害剤処理によっても抑制された。このことから、Mycによる転写と複製の活性化により両装置の衝突がG4形成、二重鎖切断を引き起こしたことが示唆される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
c-Mycによる発がん性複製ストレスにおけるG4構造の役割については順調に研究が進み、第42回分子生物学会年会においてその成果を発表した。 今後は以下を目的に研究を進める。 (1) G4増加を介したMycによる複製ストレスのメカニズムを解明する。(2) G4安定化剤がMyc高発現腫瘍細胞において抗腫瘍効果を得られるかどうかを検証する。(3) 我々が見いだしたMyc誘導性複製ストレスを軽減するPolηの機能抑制とG4安定化剤が合成致死を利用した新規がん治療法の開発へつながる可能性を検討する。 これらの結果をもって、来年度中の論文投稿を予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)Myc活性化による転写と複製装置の衝突によってG4形成、複製ストレスが増加することが示唆された。そこで、両装置の衝突で生じる特徴的なDNA/RNA hybrid構造(R-loop)の検出を免疫染色やsouth-western slot-blotでおこない、Myc活性化によりR-loopが増加するかを確認する。また、DNAとhybrid状態にあるRNAを特異的に分解するRNase H1を高発現させ Myc活性化、PDS処理をおこない、G4増加、二重鎖切断を解析し、Myc誘導性複製ストレスのメカニズムを解明する。 (2)G4安定化剤は抗腫瘍効果を示すことが報告されているが、その作用はテロメアに形成されたG4と結合しテロメラーゼを阻害すると考えられている。しかし、本研究の結果から、MycによるDNA二重鎖切断、細胞死を増強することで抗腫瘍効果を得る可能性が示唆される。そこで、Myc高発現腫瘍細胞(神経芽腫細胞)を用いて、G4安定化剤によるG4形成、DNA二重鎖切断、細胞死を解析し抗腫瘍効果を解析する。 (3)我々は、Mycによる複製ストレスの解消に、Y-family polymeraseの一員であるPolymerase η (Polη)が関与することを見いだした(Kurashma er al., JCS 2018)。G4形成とPolηの活性化を解析したところ、両者はindependent経路で働くことが示唆され、合成致死の関係にある可能性が考えられる。モデル細胞やMyc高発現神経芽腫細胞において、Polηの発現抑制や阻害剤によりPolηを抑制した上でPDS処理をおこない、二重鎖切断や細胞死を解析することにより合成致死による新規がん治療法の開発につながる可能性を検討する。
|
Causes of Carryover |
端数として残った金額である。 無理に使用頻度が低い物を購入するよりも、次年度予算と合わせて効率的に使用することとした。
|
Research Products
(3 results)