2019 Fiscal Year Research-status Report
ATL発症阻止における幹細胞様メモリーT細胞の役割の解明と治療応用
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18K07292
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
田中 ゆきえ 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 助教 (10814197)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 誠一郎 東京大学, 医科学研究所, 助教 (70376622) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | HTLV-1 Tax / ステムセルメモリーT細胞 / シングルセル解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
成人T細胞性白血病(ATL)はHTLV-Iウイルス感染後に数十年間のキャリア期を経て発症する極めて予後不良の造血器悪性腫瘍である。またATLの発症を防ぐ宿主免疫で最も重要なのがHTLV-I Tax特異的CTL(Tax-CTL)であり、このメモリーT細胞がウイルス制御の中心と考えられる。本研究では、Tax-CTLのステムセルメモリーT細胞(TSCM)の存在を明らかにし、キャリア期におけるTax-CTLのメモリーT細胞の持続的供給のメカニズム解明と、TSCMの自己複製と多分化能を利用したATLに対する新たな細胞療法の開発を目指している。 キャリア末梢血中のTax-CTLは常にT Effector Memory (TEM)優位であるが、希少ながらTSCMの安定的検出に成功し、このシングルセルTCRレパトア解析を実施した。その結果、TEM中にドミナントに存在し、HTLV-I感染細胞に対して強力な殺傷能力を持つTax-CTLクローンのTCR遺伝子配列と同じTCR遺伝子配列がTSCMのレパトア中にも検出された。これにより、Tax-CTLのドミナントCTLメモリー細胞の供給源はTSCMにあることが明らかとなった。また、TCRを介した特異的刺激で誘導されるCD137(4-1BB)の発現やサイトカイン分泌能を評価し、Tax-CTLのナイーブからエフェクター細胞までの一連のT細胞分化分画の中でTSCMは最も高いCD137発現と、強いサイトカイン(IFN-γ, TNF-α, IL-2)産生を示した。Tax-CTLのTSCMがTax抗原に対して非常に強い反応ポテンシャルを持つことが分かった。次段階は、Tax-CTLのTSCMの自己増幅やメモリーCTLの大量分裂の促進に必要な因子の同定をシングルセルRNAseq解析で行い、細胞治療応用に向けたTSCMの性状解析と拡大培養条件の検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はTax-CTLのTSCMとTEMのシングルセルTCRレパトア解析に加えて、TSCMのTax抗原特異的な反応と分裂能を測る機能解析が進んだ。また、TSCMに由来するTax-CTLクローンのTCRアフィニティー解析を予定していたが、T細胞クローンの樹立が上手くいかず、遅れている。 Tax-CTLのTSCMの自己複製と分化促進に関わる因子を同定するためのシングルセルRNA-seq等の準備を下半期より始めた。しかし、COVID-19等の影響で海外試薬の未到着、患者検体収集の停止、さらに研究活動の大幅縮減など予想外の事態に陥った。以後、本研究活動の平常的継続に困難が生じ、今現在まで研究活動レベルが著しく低下した状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究活動が平常状態まで戻り次第、出来るだけ早くTSCM由来のTax-CTLのクローン樹立を再開する。また、Tax-CTLのTSCMの遺伝子発現プロファイリング(シングルセルRNAseq解析)を行い、Tax-CTLのTSCMの自己複製と分化に関係する遺伝子群について検討し、TSCMからのTax-CTL量産を可能にする培養系の探索を行なう。結果がまとまり次第、論文化を急ぐ。今後も引き続き、HTLV-I感染キャリア、ATL患者検体の収集に努める。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響で、試薬等の輸入などに障害が発生したことや、前年度購入した抗体試薬などを使用したことで、ある程度購入が抑えられたため。また、来年度はシングルセル解析の実験に研究費が必要であり、その部分に相当する金額を来年度分に充てる。
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