2019 Fiscal Year Research-status Report
抗がん薬耐性分子病態の系統的薬理解析に基づく急性白血病の新救援治療戦略の確立
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18K07294
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
山内 高弘 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (90291377)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根来 英樹 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 助教 (40444228)
細野 奈穂子 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 講師 (50509312)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 急性白血病 / クロファラビン / 抗アポトーシスタンパク / 耐性克服 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目までに以下を見出した。シタラビン10倍耐性細胞とクロファラビン4倍耐性細胞、30倍耐性細胞を使用した。これらはヌクレオシドアナログ他薬に交差耐性を示した。クロファラビン耐性細胞はシタラビンに対して高度の交差耐性を示したが、シタラビン耐性細胞はクロファラビンに対する感受性を保持していた。シタラビン耐性細胞では薬剤転入トランスポーターに異常なく、細胞内デオキシシチジンキナーゼ発現低下が認められた。一方、2種類のクロファラビン耐性細胞ではデオキシシチジンキナーゼだけでなくミトコンドリア内デオキシグアニンキナーゼ発現低下も認められた。細胞内活性型代謝物シタラビン3リン酸、クロファラビン3リン酸は耐性細胞で減少し、耐性機序の重要要因と考えられた。耐性細胞では耐性機序として抗アポトーシスタンパクBcl-2発現増加が見出された。マイクロアレイ解析では細胞周期やDNA修復などの異常は認められなかった。Bcl-2阻害薬ベネトクラクスはクロファラビン感受性細胞、耐性細胞ともに細胞増殖を抑制しアポトーシスを誘導した。しかしその効果はBcl-2発現増強で減弱した。ベネトクラクスとシタラビンまたはクロファラビンとの併用効果を検討した。ベネトクラクスとシタラビン、ベネトクラクスとクロファラビンの併用はいずれも薬剤感受性細胞、耐性細胞で相乗的抑制効果を発揮した。さらに耐性細胞ではBcl-2だけでなく抗アポトーシスタンパクMcl-1の過剰発現があることを見出した。Mcl-1阻害薬アルボシディブはシタラビン耐性、クロファラビン耐性細胞のいずれにおいても強力な増殖抑制効果を発揮した。ところが本薬はシタラビン/クロファラビンとの併用で相反的作用となり、併用効果は得られなかった。アルボシディブが細胞周期をG1にとどめS期への導入を阻止したためであった。2剤の併用タイミングをずらすことで併用効果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の骨子は新薬クロファラビンやシタラビン耐性の克服である。そのために細胞周期制御やアポトーシス制御を標的とする併用戦略の構築を基礎理論から確立することにあった。上記のごとく2年目までに本研究で予定していた検討の成果を得た。即ち、研究計画書の記載に沿い、①i)ii) 薬剤感受性予測因子の薬理学的同定:シタラビン、新規薬剤クロファラビンいずれにおいても細胞内活性代謝物シタラビン3リン酸、クロファラビン3リン酸体の測定が可能であり、耐性細胞で生成量が低下し薬剤感受性を規定していること、さらにその原因がキナーゼ低下によることを示した。①iii) 細胞内クロファラビン3リン酸の生成量の増加は(機序的に)耐性細胞では得られなかった。② 昨年の臨床試験の結果、本研究での抗アポトーシスが耐性機序に関わる結果から抗アポトーシスタンパク阻害薬が優先されるべきであり、Bcl-2阻害薬ベネトクラクス、Mcl-1阻害薬アルボシディブによる抗アポトーシスタンパク阻害薬の効果検討を優先し、単剤・併用での殺細胞効果を明らかにした。またアルボシディブは従来CDK4,6阻害作用を有する細胞周期薬でもある。現在バラサチブよりもアルボシディブの臨床試験が先に開始となったため本薬を先に検討した。本薬はG1にとどめるためヌクレオシドアナログとの併用は同時投与では拮抗作用となることが判明した。そのためtimed sequentialにシタラビンを先行し後にアルボシディブを用いることで併用効果を発揮させることができた。このように、予定を超えて、薬剤耐性機序解明、耐性克服戦略のための基礎理論構築の検討をおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2年間で予定のほとんどの検討を終えた。ここ1‐2年で白血病治療の戦略が大きく変わりつつある。従来的な抗がん薬に、患者個別の遺伝子異常に基づいた種々の分子標的薬を併用する個別化医療が進みつつある。その中で重要な予後不良遺伝子異常の一つとして、FLT3(Fms-like tyrosine kinase 3)遺伝子変異がある。本遺伝子変異はシタラビン、クロファラビンに自然耐性を示す。本邦では最近FLT3阻害薬が2剤発売となった。しかしながらいずれの薬剤も奏功率は2割、奏功期間は6‐8か月と全く満足いくものではない。本研究の3年目はFLT3遺伝子変異陽性白血病への治療戦略確立も含めて発展させていく。新戦略の新たな要となるのが、上記分子標的薬、さらに抗体医薬/腫瘍免疫治療薬である。新規クロファラビン/従来薬シタラビン、抗アポトーシスタンパク阻害薬と免疫治療薬との併用により、薬剤耐性を克服し臨床に直結するための理論構築を目指す。またさらに重要な分子としてIDH1/2 (isocitrate dehydrogenase)遺伝子異常がある。本遺伝子異常では細胞の分化成熟が阻害され白血病化することから、本薬の阻害薬による分化誘導治療には大きな期待がかかる。すでに本薬耐性白血病細胞を作成しはじめ、耐性機構の解明ならびにシタラビン/クロファラビンとの併用戦略を検討中である。
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Causes of Carryover |
前半2年で示した基礎理論を用いて、動物実験の予定を入れているため。 但し令和元年に入り臨床試験結果が報告され、本研究で基礎理論を証明できた併用療法の効果が白血病患者で臨床的に示された。そのため場合により、より発展的に更なる新規併用について検討することを考えている。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Whole-body bone marrow DWI correlates with age, anemia, and hematopoietic activity.2019
Author(s)
Tsujikawa T, Oikawa H, Tasaki T, Hosono N, Tsuyoshi H, Yoshida Y, Yamauchi T, Kimura H, Okazawa H.
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Journal Title
Eur J Radiol.
Volume: 118
Pages: 223-230
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] High ENT1 and DCK gene expression levels are a potential biomarker to predict favorable response to nelarabine therapy in T-cell acute lymphoblastic leukemia.2019
Author(s)
Akahane K, Murakami Y, Kagami K, Abe M, Harama D, Shinohara T, Watanabe A, Goi K, Nishi R, Yamauchi T, Kimura S, Takita J, Look AT, Minegishi M, Sugita K, Inukai T.
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Journal Title
Hematol Oncol.
Volume: 37
Pages: 516-519
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Distinct clinical and biological implications of CUX1 in myeloid neoplasms.2019
Author(s)
Aly M, Ramdzan ZM, Nagata Y, Balasubramanian SK, Hosono N, Makishima H, Visconte V, Kuzmanovic T, Adema V, Nazha A, Przychodzen BP, Kerr CM, Sekeres MA, Abazeed ME, Nepveu A, Maciejewski JP.
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Journal Title
Blood Adv.
Volume: 3
Pages: 2164-2178
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Phase Ⅱ study of FLAGM(fludarabine+high-dose cytarabine+granulocyte colony-simulating factor+mitoxantrone) for relapsed or refractory acute myeloid leukemia.2019
Author(s)
Hatsumi N, Miyawaki S, Yamauchi T, Takeshita A, Komatsu N, Usui N, Arai Y, Ishida F, Morii T, Kano Y, Ogura M, Machida S, Nishii K, Honda S, Ohnishi K, Naoe T; Japan Adult Leukemia Study Group (JALSG).
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Journal Title
Int J Hematol.
Volume: 109
Pages: 418-425
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Gilteritinib Significantly prolongs overall survival in patients with FLT3-mutated relapsed/refractory acute myeloid leukemia: results from the phase 3 ADMIRAL trial.2019
Author(s)
Hosono N, Perl AE, Martinelli G, Cortes JE, Neubauer A, Berman E, Paolini S, Montesinos P, Baer MR, Larson RA, Ustun C, Fabbiano F, Erba HP, Di Stasi A, Stuart R, Olin R, Kasner M, Ciceri F, Chou WC, Podoltsev N, Recher C, Yokoyama H, Yoon SS, Lee JH, Pardee T, Fathi AT, Liu C, Hasabou N, Liu X, Bahceci E, Levis MJ.
Organizer
15th National conference on leukemia and lymphoma
Int'l Joint Research / Invited
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