2018 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of the resistance mechanisms to molecular-targeting anticancer agents
Project/Area Number |
18K07302
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
杉本 芳一 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (10179161)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | がん分子標的薬 / 薬剤耐性 / AKT |
Outline of Annual Research Achievements |
AKTは細胞の生存と増殖に重要な働きをするkinaseである。細胞分裂のM期での染色体分離におけるAKTの関与について検討した。ヒト卵巣がん細胞をAKT阻害剤で処理した時、M期におけるmultipolar spindleおよび染色体のmisalignmentの出現頻度が増大した。またAKTの活性型変異体を安定発現させた細胞では、multipolar spindleの出現頻度は低かった。以上より、AKTが染色体を正常に分配する方向に働いていることが示唆された。また、A2780細胞をGSK3β阻害薬で処理した時、multipolar spindleの出現頻度は減少した。以上より、AKT3の染色体分離に対する作用に、その下流のGSK3βの関与が示唆された。 PARPは、DNA修復に関与する。ヒト卵巣がん細胞A2780のPARP阻害薬olaparibに対する耐性細胞では、PARP1の発現が低下していた。PARP1を強制発現させたolaparib耐性細胞は、olaparibに感受性を示した。これにより、PARP1がolaparibの効果決定因子であることが示された。他のPARP阻害薬に対する交差耐性を検討したところ、olaparib耐性細胞は、talazoparib、niraparibに対して耐性を示したが、rucaparibとveliparibに対しては耐性を示さなかった。olaparibを処理したA2780細胞ではDNA傷害の指標であるγ-H2AX fociが増加したが、olaparib耐性細胞ではその増加は少なかった。一方、rucaparib処理では、A2780細胞とolaparib耐性細胞共に、γ-H2AX foci数の増加は少なかった。以上より、rucaparibはolaparibと異なる機構で細胞増殖阻害作用を示すことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者らは、PLK阻害薬耐性細胞およびAURK阻害薬耐性細胞に共通して、AKT3の発現の亢進と活性化が起こっていることを示してきた。AKTは細胞のアポトーシスを阻害する生存シグナル分子である。また申請者らは、AURK阻害薬が誘導する細胞のaneuploidyをAKT3が抑制することを示した。本研究では、分子標的治療薬耐性におけるAKTの関与を解析する。本年度の研究において、ヒト卵巣がん細胞をAKT阻害剤で処理した時、3つ以上の紡錘体極が出現するmultipolar spindleおよび染色体のmisalignmentの出現頻度が増大した。またAKTの活性型変異体を安定発現させた細胞では、multipolar spindleの出現頻度は低かった。以上より、AKTが細胞分裂のM期において染色体異常を防ぐ方向に働いていることが示唆された。また、ヒト卵巣がん細胞をGSK3β阻害薬で処理した時、multipolar spindleの出現頻度は減少した。以上より、AKT3の染色体分離に対する作用には、その下流のGSK3βが関与している可能性が示唆された。これらの成果は本研究の当初の目的と合致している。 また本年度は、ヒト卵巣がん細胞由来のolaparib耐性細胞を用いた研究を行い、PARP1がolaparibの効果決定因子であることを示した。しかし他のPARP阻害薬に対する交差耐性を検討したところ、olaparib耐性細胞は、rucaparibとveliparibに対しては耐性を示さなかった。rucaparibで処理したA2780細胞、olaparib耐性細胞では、DNA傷害の指標であるγ-H2AX fociの増加は少なかった。以上より、rucaparibはolaparibと異なる機構で細胞増殖阻害作用を示すことが示唆された。これは、当初の計画を超えた新たな成果である。
|
Strategy for Future Research Activity |
当研究室の保有する抗がん剤および分子標的治療薬のライブラリーを用いて、AKTの活性型変異体を安定発現させたHCT116/myrAKT-3細胞、A2780/myr-AKT3細胞、A2780/AKT3-E17K細胞が、どのような薬に抵抗性・感受性を示すかを網羅的に解析する。この結果をPLK阻害薬耐性細胞、AURK阻害薬耐性細胞の薬剤耐性パターンとあわせて検討する。 PLK阻害薬耐性細胞、AURK阻害薬耐性細胞、HCT116/myrAKT-3細胞、A2780/myr-AKT3細胞、A2780/AKT3-E17K細胞における、細胞増殖および細胞分裂に関係する分子の発現および活性の変動を詳細に調べる。また、AKTの下流シグナルの活性化について比較検討する。AKT阻害薬、GSK-3β阻害薬によって誘導される細胞分裂異常の機構を解析し、AKTの関与を明らかにする。 bromodomain-containing protein 4(BRD4)の阻害薬JQ1に対する耐性細胞における遺伝子発現の変化を網羅的に検討し、細胞の生存および増殖に関連する遺伝子の機能について検討する。JQ1耐性細胞における上皮間葉転換(EMT)と、SNAIL、SLUG誘導性のEMTとを比較検討する。 SP(+)細胞を高率に含むSLUG遺伝子導入細胞116/slug-25由来のSP(-)細胞にshRNAライブラリーを導入し、SP(+)細胞分画に移行した細胞を分取して、導入されたshRNAクローンを解析する。116/slug-25細胞のSP(+)細胞形質を変化させる化合物の検索を行い、その機構を解析する。
|
-
-
[Journal Article] Regorafenib-Induced Hand-Foot Skin Reaction is More Severe on the Feet than on the Hands.2019
Author(s)
Nonomiya Y, Yokokawa T, Kawakami K, Kobayashi K, Aoyama T, Takiguchi T, Sugisaki T, Suzuki K, Suenaga M, Wakatsuki T, Yamaguchi K, Sugimoto Y, Hama T.
-
Journal Title
Oncology Research
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-