2019 Fiscal Year Research-status Report
mRNAスプライシングを正確に保つ機構を逆手にとったがん抑制戦略
Project/Area Number |
18K07304
|
Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
福村 和宏 藤田医科大学, 総合医科学研究所, 助教 (80622117)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
恵美 宣彦 藤田医科大学, 医学部, 教授 (30185144) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | Pre-mRNAスプライシング / RNPS1 / アンチセンスオリゴヌクレオチド / PSAP |
Outline of Annual Research Achievements |
オーロラBは、多くのがん細胞種で過剰発現しており、ゲノム不安定性を生み出す。それゆえ、オーロラB阻害剤は抗がん性を持ち、抗がん剤として精力的に研究開発が行われている。我々は、これまでに培養細胞を用いた解析からRNPS1が、オーロラB mRNAの第5エキソンの特定の領域に結合し、正確なスプライシングを保証していることを明らかにしていた。実際、RNPS1の発現阻害を行うと、オーロラB mRNAの正確なスプライシングが阻害され、タンパク質量が著しく減少する。そこで、この領域に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを細胞内に導入することで、オーロラB mRNAへのRNPS1の結合を阻害し、特異的に正確なスプライシングを阻害する事ができるのではないかと考えた。現在、オーロラB mRNAの正確なスプライシングを阻害できるオリゴヌクレオチドを創出できているが、オーロラBタンパク質を著しく減少させるまでには至っていない。現在、さらなる改善を試みている最中である。 RNPS1によるオーロラB mRNAの正確なスプライシング制御の詳細なメカニズムを明らかにする為に、RNPS1と相互作用するタンパク質因子群のノックダウン実験を行った。その結果、PININとSAP18をノックダウンした場合でも、オーロラB mRNAの異常スプライシングが誘導された。RNPS1, PININ, SAP18はPSAPと呼ばれる複合体を形成する事が知られている。この事からPSAP複合体がオーロラB mRNAの正確なスプライシングに必須である事が明らかになった。PSAPは、これまでに我々が同定した第5エキソンの特定領域に結合している事も明らかにした。PSAP複合体は、機能未知の複合体であり、新たな機能の発見に繋がると期待している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの解析から、オーロラB mRNAの正確なスプライシングを阻害できるオリゴヌクレオチドを創出できており、概ね順調に進展している。しかしながら、オーロラB タンパク質の著しい発現低下を誘導できていないため、さらなる改善を試みている。 当初は予期していなかったが、オーロラB mRNAのスプライシングの正確性を保証しているのは、RNPS1単独ではなくRNPS1,PININ,SAP18からなるPSAP複合体である事を明らかにした。PSAP複合体は、これまで機能未知の複合体であり、新たな新機能の発見に繋がると期待している。 以上の理由から、本研究の進捗状況は概ね順調であると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
RNPS1結合配列に相補的な領域に対して複数本の2-O-メチル化修飾オリゴヌクレオチドを合成し、細胞に導入した結果、期待通りオーロラB mRNAの異常スプライシングを誘導する事ができた。しかしながら、異常スプライシングの誘導が弱く、さらなる改良が必要である。今後、2-O-メチル化修飾から、モルフォリノ修飾に変更し、安定性を高めたオリゴヌクレオチドで、実験を行う予定である。 我々は、RNPS1,PININ,SAP18からなる複合体PSAPが、スプライシングの正確性を保証するメカニズムを併せて明らかにした。それゆえ、PSAPがオーロラB mRNAだけではなく、グローバルにmRNAスプライシングエラーを抑えているのではないかと想定し、PSAP構成因子のノックダウン細胞のトランスクリプトーム解析を現在行っている。
|
Causes of Carryover |
今年度次世代シーケンス解析を多検体行う予定であったが、次年度に持ち越しとなったためである。
|