2018 Fiscal Year Research-status Report
腎がんにおける遺伝子変異に基づいた合成致死治療法の開発
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18K07312
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
荻原 秀明 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (40568953)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 腎臓がん / PBRM1 / SETD2 / BAP1 / 合成致死性 / 最適化がん治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
腎臓がんは、網羅的変異検索により遺伝子異常が明らかにされている。しかし、その遺伝子異常の多くは失活型の遺伝子異常であり、遺伝子変異に基づいた個別化がん治療法は確立されていない。腎臓がんでは、PBRM1、SETD2、BAP1等のクロマチン制御遺伝子が高頻度で失活変異している。いずれかの遺伝子変異の合計は約52%となる。そのため各遺伝子の失活がんに対する合成致死治療法を確立できれば、腎臓がんの半数の患者の治療法を提言できる。そこで本研究では、腎臓がんの約半数の患者が対象となるPBRM1、SETD2、BAP1欠損がんに対する合成致死治療標的を同定し、腎臓がん患者を対象とした個別化がん治療法を開発することを目的とする。その目的を達成するために、PBRM1、SETD2、BAP1欠損がんに対する合成致死治療標的との合成致死性のメカニズムを解明することで創薬開発のPOC(Proof of Concept)を取得し、創薬開発も視野に入れた基盤情報の獲得を目指す。 これまでの研究で、本研究において重要な実験系であるPBRM1、SETD2、BAP1遺伝子KO細胞株モデルの構築に成功している。そして、これらのノックアウト(KO)細胞株モデルを用いて、化合物およびsiRNAライブラリースクリーニングによって、候補となる標的薬や標的遺伝子を得ている。そこで、平成30年度では、これらのスクリーニングで得られた候補の中から有望な標的の絞り込みを行い、候補薬剤のなかで、PBRM1・SETD2・BAP1-KOに共通性して選択性の高かったX阻害薬A、Y阻害薬Bに着目し、さらに詳細な解析を進めた。X阻害薬A、Y阻害薬Bによる細胞増殖アッセイ、コロニー形成アッセイによる生存率測定法で検証した。その結果、X阻害薬およびY阻害薬がPBRM1・SETD2・BAP1-KOに共通性して選択性が高いことが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に準じて、研究を進めてきており、有望な標的候補を同定できているため。
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Strategy for Future Research Activity |
PBRM1・SETD2・BAP1-KOに共通性して選択性の高い標的薬として、X阻害薬AおよびY阻害薬Bを同定した。そこで、今後はA、B以外の別の阻害薬についても検証を行う。また、XおよびY遺伝子をノックダウンしたときに合成致死性を誘導するかを検討する。また、ノックアウト細胞株だけではなく、PBRM1・SETD2・BAP1遺伝子の変異がん細胞株を用いて、薬剤選択性と遺伝子ノックダウンによる合成致死性を検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由 別の研究費でこれまでの研究を行ってきたが、その時のデータの解析に十分に時間をかけたため、研究計画よりも最小限の実験に抑えたため。 次年度の使用計画 主に細胞培養品の購入に使用し、本研究に必要な試薬や細胞株等の購入にも使用する。
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