2019 Fiscal Year Research-status Report
腎がんにおける遺伝子変異に基づいた合成致死治療法の開発
Project/Area Number |
18K07312
|
Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
荻原 秀明 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (40568953)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 腎臓がん / PBRM1 / 合成致死性 / 最適化がん治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では腎臓がんの約半数の患者が対象となるPBRM1、SETD2、BAP1欠損がんに対する合成致死治療標的を同定し、腎臓がん患者を対象とした個別化がん治療法を開発することを目的とする。これまでの研究で以下の研究成果を得た。PBRM1、SETD2、BAP1遺伝子KO細胞株モデルの構築し、化合物およびsiRNAライブラリースクリーニングによって、候補となる標的薬や標的遺伝子を同定した。2018年度では、これらのスクリーニングで得られた候補の中からPBRM1・SETD2・BAP1-KOに有望な標的を絞り込んだ結果、X阻害薬、Y阻害薬を同定した。 2019年度では、以下の検討を行った。まず、標的Xおよび標的Yをノックダウンすることで、PBRM1・SETD2・BAP1-KOで合成致死性を示すかを検討した。その結果、PBRM1-KO細胞に対して、標的Xをノックダウンしたときに合成致死性を示したが、標的Yのノックダウンでは合成致死性を示さなかった。また、SETD2-KO細胞およびBAP-KOに対して標的Xあるいは標的Yをノックダウンしても合成致死性を示さなかった。以上の結果より、PBRM1の合成致死標的として標的Xが合成致死標的候補として絞り込んだ。そこで、腎臓がん細胞株におけるPBRM1欠損がん細胞株に対するX阻害薬の選択性を検討した。しかし、PBRM1欠損型がん細胞株群(n=7)は、PBRM1正常型がん細胞株群(n=5)に比べてX阻害薬に対する有意な選択性を示さなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分子標的薬スクリーニングによって、PBRM1、SETD2、BAP1のノックアウト細胞株モデルにおいて有望な化合物候補を絞り込んだ。しかし、腎臓細胞株において、これらの遺伝子欠損がん細胞株モデルにおいて、選択性を示す有望な化合物候補を得ることができなかったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
ノックアウト細胞株モデルにおいて、PBRM1、SETD2、BAP1欠損細胞に有望な標的薬候補を絞り込むことができたが、腎臓がん細胞株モデルにおいては有望性を示す候補を同定することができなかった。この結果は、本研究で同定した標的候補は腎臓がんでは有望ではないことを意味すると考えられた。以上の結果を踏まえて、腎臓がんにおける有望な治療標的を同定する目的を達成させるために、次年度はアプローチ法を変えて検討する。まず腎臓がんで40%の欠損頻度であるPBRM1欠損がんに着目する。次にPBRM1欠損がん細胞株にPBRM1遺伝子を強制発現させたレスキュー細胞株を樹立する。がん細胞株由来のモデル系を基に、PBRM1欠損がんの合成致死標的を同定することを目指す。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由 データの解析およびアッセイ系の準備に十分な時間をかけたため、研究計画よりも最小限の実験に抑えたため。 次年度の使用計画 主に細胞培養やアッセイ系の構築に関する物品の購入に使用する。
|