2020 Fiscal Year Research-status Report
超小型膜表面応力センサー(MSS)を用いた呼気によるがんの早期発見法の探索
Project/Area Number |
18K07318
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小島 寛 筑波大学, 医学医療系, 教授 (10225435)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大越 靖 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10400673) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超小型膜型表面応力センサ / ガガスクロマトグラフ質量分析計 / がん / 早期診断 / 呼気 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新たに開発された人工嗅覚センサ(超小型膜型表面応力センサ: MSS)を用いた簡易呼気採取・測定法を確立し、呼気中の匂いでがんの早期発見を可能にするスクリーニング法を開発することを目的とする。健常人またはがん患者を対象として、MSSによる測定と同時に、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)による成分分析を行った。 まず、MSSによる呼気測定法を確立するために、再現性、検出性能の評価を行った。1人の健常人から1年間をとおして採取した呼気をMSSで測定し、再現性の評価を行った。一方で飲酒前後の呼気を比較し、MSSの検出性能を評価した。これらの結果より、MSSは高い再現性をもって高精度で呼気中の臭い成分を検出できることが、明らかになった。この成果は現在Sensorsに投稿中である。 次に、確立された呼気採取測定法を用いて、がん患者呼気と健常者呼気をMSSが判別できるか否かを検討した。今日までに21がん種の患者呼気110検体、健常者呼気70検体を採取し、MSSによる測定を行った。機械学習を用いて測定データを解析した結果、がん種やがんの進行状態に関わらずがん診断精度は約8割であり、MSSががんの早期発見に利用可能である可能性が示唆された。また、同時に行ったGC-MS分析によって、がん患者呼気中で健常人とは有意に濃度が異なる成分があることが明らかになりつつある。 これまでの研究で、MSSを用いた呼気測定法の信頼性が証明され、比較的高い精度でがん患者に特有の臭い成分の検出が可能であることが示唆された。今後、未だ手つかずのGC-MSデータの解析を進め、がんに特有の臭い物質を絞り込んだ上でMSS測定機器の改良を行う。さらに、環境中に存在する臭い物質などによるノイズを排除することによって、より高い精度で簡便に検査可能な診断技術の確立を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度においては、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、感染リスクがある呼気採取を新たに行うことは出来なかった。従って、検体数の積み増しという点では、研究開始前に予想できなかった遅れが発生していることは否定できない。しかしながら、本研究においてはこれまでに、21がん種の患者呼気約110検体、健常者呼気約70検体を採取し、MSSおよびGC-MSによるデータが蓄積されているので、これらのデータを詳細に解析することによって、研究目的の達成は可能であると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度においては、これまでに集積した21がん種の患者呼気約110検体、健常者呼気約70検体のMSS, GC-MSデータを詳細に解析し、以下の手順で研究を進める。まずGC-MS解析で得られたデータを基に、がん患者に特有の臭い物質(おそらくは揮発性有機物質(VOC))を明らかにし、いくつかの臭い物質の組み合わせによってがんの診断が可能であるか検討する。次に、GC-MSで明らかになったがんに由来する臭い物質に対して、MSSがどの様な挙動を示すか明らかにし、MSSの感応膜を改良することによって診断精度を向上させることが出来ないか探索する。 令和3年度が本プロジェクトの最終年度であるので、GC-MSおよびMSSのデータを子細に解析し、それぞれの測定法ががんのスクリーニングにどの程度有用であるか見極め、令和4年度以降の研究の方向性決定の判断根拠を得ることを目標とする。
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Causes of Carryover |
令和2年度は、新型コロナウイルスの蔓延によって、感染リスクのある呼気採取が一切行えなかった。また、呼気によるがん診断の最新の知見を得るために学会に参加することを予定していたが、国内外の学会が全てオン・ライン開催となった。これらの事情によって、予定していた消耗品や旅費の執行が出来なかったため、次年度使用額が発生した。 新型コロナウイルス感染が収束し、呼気採取や国内外の学会参加が可能になった場合には、当初の計画どおりこれらの消耗品や旅費に充当する。呼気採取や学会参加が可能でない状況が続いた場合には、当該研究は2021年度が最終年であり、呼気データは十分に集積されているので、これらデータを解析するためのソフト購入、Webなどを利用した可能な限りの最新知見収集、研究成果出版費用などにあてる。
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