2018 Fiscal Year Research-status Report
がん浸潤制御性T細胞の抗原同定とそれに基づく免疫応答抑制機構の解明
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18K07321
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
小林 栄治 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (70459733)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | T細胞受容体 / 制御性T細胞 / 抗原同定 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗PD-1抗体などの免疫チェックポイント分子を標的にするアプローチに加え 、免疫応答を負に制御する 制御性T細胞(regulatory T cell: Treg)の抑制を解除することで、がんに対する免疫応答を強化する新たな治療法の開発が注目されている 。しかし、がん組織内でTregがどのような抗原を認識し、抗原特異的にがん免疫応答を抑制しているかに関しては、いまだ不明な点が多い。そこで 、本研究では独自に開発した単一T細胞解析技術を用いて、がん組織内でクローナルに集積するTregのT細胞受容体(TCR)の網羅的な解析を行い、それらTregの抗原を同定する。さらに、同定した抗原を用いて、Tregが抗原特異的にがん免疫応答を抑制しているか否かを検証する。 本年度はマウスにB16F10細胞を播種し、腫瘍を形成させ、その腫瘍から腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を回収し、TCRレパトアの解析と腫瘍への反応性を評価した。具体的にはB16F10細胞をマウスに播種後、7日後、10日後、14日後のマウスから所属リンパ節、spleenおよび腫瘍からTILを調整した。その後、活性化マーカーにはCD137とTregのマーカーにはCD25を用いて、細胞をシングルセルソーティングし、TCRのレパトアを解析した。その結果、TILおよび一部のリンパ節にはクローナルに増殖しているT細胞が存在していたが、spleenにはクローナルなT細胞はほとんど観察されなかった。 更に、取得したTCRの発現ベクターを作製し、リンパ球に導入して発現させた。このリンパ球を用いて、I-Abを発現させたB16F10への反応性を評価したところ、10個中1個のTCRでB16F10への反応が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、我々が独自に開発したTCRクローニングシステムを基盤に、担がんマウスモデルを用いて、(1) がん組織に浸潤するTregのレパトアの網羅的解析を行い、クローナルに集積するTreg が認識する抗原の同定を行う。さらに、 (2) 同定した抗原を用いて 、Tregの抗原特異的な免疫抑制を検証することが目的である。本年度はTILのレパトア解析が主な計画である。計画にそって、B16F10を播種したマウスからTILを調整し、活性化マーカーにはCD137、TregのマーカーにはCD25を用いて、細胞をソーティングし、TCRのレパトアを解析した。その結果、TILおよび一部のリンパ節からはクローナルに増殖しているT細胞が存在していたが、spleenにはクローナルなT細胞はほとんど観察されなかった。 更に、取得したTCRの発現ベクターを作製し、リンパ球に導入して発現させた。このリンパ球を用いて、I-Abを発現させたB16F10への反応性を評価したところ、10個中1個のTCRでB16F10への反応が観察された。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、レパトア解析までは順調に進んだが、B16F10反応性が確認されたTCRは、現時点では1個のみである。次年度は再現性を確認するとともに、新たにTCR発現ベクターを作製し、B16F10への反応性を評価する。更に、効率よく抗原を同定する系の確立を行う予定である。
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Causes of Carryover |
各TCRレパトアの解析に時間を要したため、予定よりTCRレパトアの解析数が少なくなり、マウスやその他解析用の試薬を使用しなかった。今後はTCRレパトアの解析数を増やし、更に取得したTCRの反応性評価に次年度使用額を用いる。
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