2019 Fiscal Year Research-status Report
mTORC構成因子Tel2を標的とした創薬の基盤構築
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18K07329
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
西谷 直之 岩手医科大学, 薬学部, 教授 (10286867)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大津 圭史 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (60509066)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Wnt / 阻害剤 / mTOR |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らがWntシグナル阻害剤として同定した化合物(WSI)が、mTOR複合体(mTORC)構成因子の1つであるTel2に結合することを見出した。Tel2はmTORキナーゼの安定化因子であり、その機能制御は新たな治療戦略になり得る。FKBP12を介したラパマイシン誘導体のmTOR阻害と双璧をなす治療戦略になり得る。本研究では、新規治療標的としてのTel2の有用性を明らかにすることを目的とする。 2018年度にin vitroでWSI結合活性を欠くTel2変異体を作成したが、2019年度は、生細胞中のTel2とWSIの結合特異性について検討した。WSIにユビキチンリガーゼのリガンドであるレナリドミドまたはウベニメクスを共有結合して複数のWSI-PROTACを作成した。WSI-PROTACは、WSI結合タンパク質近傍にユビキチンリガーゼを引き寄せ、ユビキチン-プロテアソーム系による分解を引き起こす。これらを用いてTel2の分解誘導の有無を評価することによって、生細胞中のWSI-Tel2間結合を確認した。WSI-PROTACは、野生型Tel2を効率的に分解誘導した。一方、in vitroでのWSI結合活性を欠くTel2変異体は分解を回避した。したがって、WSIは生細胞中で特異的にTel2に結合することが示された。 次に、WntシグナルへのTel2の関与を明らかにするために、siRNAによる遺伝子ノックダウンを行った。当初は、Tel2ノックダウンによってWntシグナルの抑制が起こると予想したが、β-cateninタンパク質レベルの低下は明確にはならなかった。しかし、WSIによるβ-cateninタンパク質レベルの低下が、Tel2ノックダウンによってキャンセルされた。したがって、WSIがTel2依存的にWntシグナルを抑制することが新たに明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北里研究所との共同研究によってWSI-PROTACの合成に成功したことで、生細胞中でWSIとTel2の結合を速やかに証明することができた。また、当初予定していたTel2ノックダウンによるWntシグナル阻害に代わって、Tel2依存的なWSIの作用というFKBP12を介したラパマイシンによるmTOR阻害と類似した作用機序の可能性が浮上した。
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Strategy for Future Research Activity |
内在性Tel2の発現を抑制し、化合物結合活性を欠く点変異型Tel2を恒常的に発現する再構成細胞を用いた実験を行う。WSIによるシグナル伝達阻害への耐性化を解析する。また、この細胞を用いたマウスゼノグラフトモデルでin vivoでも耐性化を確認する。これによって、WSIの抗腫瘍効果がTel2への結合を介していることを立証する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大によって年度末の学会がWeb開催となったため、出張旅費が発生しなかった。
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