2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of therapeutic strategy targeting epithelial-mesenchymal transition and cell-fate determination factor for malignancy
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18K07335
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
吉川 清次 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (40333562)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多系統分化 / 上皮間葉転換 / トリプルネガティブ乳癌 / 脂肪分化誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究で、間葉系乳癌細胞に上皮化誘導するも、増殖能・造腫瘍性は低下しなかったことが判っている(吉川未発表データ)。間葉系乳腺細胞はCD73陽性という間葉系幹細胞の特徴をもつことから、間葉系幹細胞と同様、多系統分化がおこる可能性がある。PPARγは脂肪細胞分化に関与する転写因子で、Basal B・間葉系乳癌細胞で高いことから間葉系細胞が脂肪分化能を有する可能性がある。不死化乳腺細胞に上皮間葉転換を誘導するとCD73・PPARγ遺伝子発現が上昇することを確認している。 癌幹細胞モデルを用いて多系統分化誘導を試み、表面マーカーのフローサイトメーター解析を行った。CD24・CD44・CD73 ・PD-L1の分化表面マーカーの多重染色フローサイトメーター解析方法を確立し、分化マーカープロファイルの解析より、骨分化・軟骨分化・脂肪分化各培地下各細胞のCD44-CD73-CD24プロファイルが変化し、分化状態が変化した可能性が示唆された。 次に乳癌幹細胞モデル系を用いて脂肪分化誘導を試みたところ、Ras上皮・Ras間葉のみ脂肪酸取込み能力を反映するBODIPYが増加し、Ras間葉とMDA-MB-231(Basal B乳癌)のみ脂肪酸受容体分子CD36の発現が増加した。このことより、乳腺上皮の上皮間葉転換細胞では脂肪細胞分化できず乳癌間葉系細胞においてのみ脂肪細胞分化誘導ができたことを示唆する。 文献調査により、癌細胞脂肪細胞分化誘導により癌浸潤・転移形成抑制とする報告とCD36発現は癌浸潤・転移形成について促進・抑制と相反する報告があった。癌脂肪細胞分化誘導-CD36発現-癌増殖・浸潤・転移形成の関係について今後検証する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年に引き続き臨床検査技師国家試験合格に向けた学部学生の教育に時間を割いた為に研究が遅れ気味である。一方で卒業研究の中で乳癌幹細胞の多系統分化能、中でも脂肪分化療法の可能性を見出した。また乳癌幹細胞モデルにおける代謝変化の解析では多くの代謝物量の変化が上皮間葉転換において同定されているが、代謝マップを作成しつつその意義の解明を少しずつ進めている。これまで乳癌に加えて、膠芽腫・骨肉腫・滑膜肉腫・線維腺腫の間葉上皮転換治療への応用を解析してきたが、今回の結果によって脂肪分化への応用の可能性も見えてきた。さらに肺癌や前立腺癌は治療抵抗性の1つとして小細胞化が起こり神経内分泌腫瘍化を来すがその主要細胞内には間葉転換を起こすことで腫瘍内部の不均一化をきたし治療抵抗性を獲得することが報告されており、そのような間葉系腫瘍細胞への治療応用の可能性も考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
乳癌幹細胞モデルで明らかになった脂肪分化誘導において、CD36陽性細胞とCD36陰性細胞集団をFACSソーティングにより純化し、2つの細胞集団の特性を比較する。遺伝子発現プロファイリングによる分化状態の確認、2D・3D増殖能の比較、CD36発現誘導方法の検討を行う。 乳癌幹細胞モデルにおける代謝変化の解析ではこれまでに作成した解糖系・グルタチオン代謝経路に加えて、他のアミノ酸・脂肪酸・コレステロール関連経路のマップを作成し乳癌幹細胞のおける代謝変化の全容解明を進める。 小細胞肺癌細胞株を用い上皮間葉転換dual reporterを導入し、間葉系細胞と神経内分泌細胞の分離が可能かを検討する。
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Causes of Carryover |
研究の進捗が遅れている為当初の予定額を全て使用せず、2020年度に回すことにした。2020年度に 乳癌幹細胞モデル脂肪分化誘導において、CD36陽性細胞とCD36陰性細胞集団を純化し、2つの細胞集団の特性を遺伝子発現プロファイリング、2D・3D増殖能の観点から解析する。CD36発現誘導方法の検討を行う。小細胞肺癌細胞株を用い上皮間葉転換dual reporterシステムの確立を行う。
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