2018 Fiscal Year Research-status Report
フォーカストグライコミクスを用いた血清糖鎖腫瘍マーカーの探索
Project/Area Number |
18K07344
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Research Institution | Osaka International Cancer Institute |
Principal Investigator |
岡本 三紀 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 分子生物学部主任研究員 (20332455)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 腫瘍マーカー / 糖鎖 / HPLC / MS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、がん診断に有効な新規糖鎖腫瘍マーカー開発をめざし、これまで当研究室が確立した微量糖鎖構造解析技術を用いて、がん患者血清より新規腫瘍マーカー候補の探索を行った。血清中の糖鎖は主に中性糖と糖鎖構造末端にシアル酸が付加した酸性糖で構成されているが、非末端部にシアル酸が付加した糖鎖や、硫酸基のようなシアル酸以外の酸性糖も少なからず存在する。これらの微量酸性糖を効率的かつ網羅的に検出するため血清グライコミクス解析を行った。がん患者及び健常者血清から調整した糖鎖をSalmonella typhimurium由来のN-アセチルノイラミニダーゼと反応後、DEAEカラムにて酸性糖と中性糖に分離した。血清糖鎖で大部分を占める非還元末端シアル酸付加糖鎖は、この酵素処理により末端のシアル酸のみが除去され中性糖領域に溶出される。一方、末端以外の内部構造にシアル酸が付加された糖鎖はN-アセチルノイラミニダーゼには反応しないため酸性糖領域に溶出される。この酸性糖領域に溶出された分画を、順相および逆相カラムを用いたHPLCで分離し、がん患者と健常者間の分離パターンを詳細に比較した。14種類のがん患者特異的なピークは腫瘍マーカー候補として、酵素消化および2次元糖鎖マッピング法、質量分析法を組み合わせて構造決定した。14種類のマーカー候補にはSTnやSda/CAD抗原を有する糖鎖構造が含まれた。さらに臨床応用への可能性を検証するため、それぞれの腫瘍マーカー候補は3連四重極型質量分析計を用いたSRM(selected reaction monitoring)法で血清中の相対定量を行った。その結果、構造依存的にがん患者で上昇することがわかり、がん診断には複数の腫瘍マーカーを用いた測定が有効であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在、当初の実施計画以上に進んでいる。 膵臓癌9名、胃癌11名、健常者20名分の血清をもとに、シアリダーゼ処理後の酸性糖鎖のHPLCパターン比較を行った。本研究で着目した非末端部にシアル酸が付加した糖鎖構造に加え、硫酸基付加糖鎖も多く検出したが、一連の研究で、以前行ったArthrobacter ureafaciens由来のシアリダーゼを反応させ検出した硫酸基付加糖鎖の結果を組み合わせ、また同じ患者由来の血清を使うことにより、本研究で着目した非末端部にシアル酸が付加した糖鎖のピークを迅速に絞り込むことができ、かなりの時間短縮につながった。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに見出した14種類の腫瘍マーカー候補は、膵臓癌9名、胃癌11名、健常者20名のみの血清レベルを確認した。これらのマーカー候補が臨床応用可能かどうか、より多くの患者血清で確認する必要がある。さらに、がん患者ごとに上昇する糖鎖構造が異なることから、がん診断にはより多くの腫瘍マーカーを見出し、複数のマーカーを用いた測定が有効であることが示唆された。異なるがん種、異なる個体それぞれにマーカーとなる糖鎖構造が存在する。そこで更なるグライコミクス解析を行い、新たな糖鎖腫瘍マーカー候補を探索する。
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Causes of Carryover |
当初の研究実施計画では糖鎖調整試薬及びHPLC/MS消耗品に使用する予定であった。しかし機器類の劣化がかなり激しく、購入を考慮して消耗品代を節約した。次年度も試薬およびカラムなどの消耗品の購入と、機器の修理および購入に使用する。
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Research Products
(3 results)