2018 Fiscal Year Research-status Report
The role of serotonin projection under negative emotions.
Project/Area Number |
18K07356
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
安田 正治 関西医科大学, 医学部, 講師 (90744110)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永安 一樹 京都大学, 薬学研究科, 助教 (00717902)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | セロトニン / 情動 / 報酬 / ストレス / 自律神経 / サル / 背側縫線核 / 黒質網様部 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、様々な情動下で適切な行動を遂行するための脳内機構を明らかにするため、大脳基底核の出力核である黒質網様部へのセロトニン投射に注目し、その機能的意義を解明することを目的とする。 我々は2頭のサルに対し、正、負、中立の3つの情動条件下で選択行動を行う認知課題を学習させた。情動指標として計測されたサルの自律神経応答では、負の情動条件下での瞳孔径の有意な拡大や心拍数の上昇が観察され、負の情動条件下でのストレス状態が示唆された。また学習初期の選択行動では負の情動条件下での成績低下が認められ、この差は学習が進むにつれ消失した。このことはサルによるストレス耐性の獲得を示唆する。 次に我々は課題遂行中のサルにおいて、セロトニン細胞の集中する背側縫線核から単一細胞外記録を行った。その結果、約半数の背側縫線核細胞が選択行動に応じて行動前の神経活動を変化させること、その大多数が適切な選択時により強く応答することを見出した。こうした行動予測的な活動の多くは、正もしくは負の情動条件下での活動上昇を伴っており、背側縫線核細胞の情動信号による、適切な行動選択への寄与が示唆される。また我々は、セロトニン投射の情報処理とその機能を明らかにするため、光遺伝学的手法による回路解析も行った。セロトニン細胞特異的に光駆動性チャネル(ChR2)を発現するAAVベクターをサル背側縫線核に局所注入し、背側縫線核細胞の光応答を調べた。その結果、多くの細胞が興奮性の光応答を示し、ChR2発現を電気生理学的に確認した。さらに我々はセロトニン細胞の投射領域である黒質網様部においても光刺激を行い、黒質網様部ニューロンの発火活動の変化を確認、行動出力系である黒質網様部へのセロトニン投射を回路特異的に制御、解析するための技術的基盤を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本行動課題では、情動を惹起するために用いる条件刺激の学習と、条件刺激提示下での認知課題を分離したセッションにおいて行ったため、認知課題での安定した情動反応が得られるまでに予想よりも長い期間を要した。そのため課題遂行下での神経応答計測は、セロトニン投射の情報解析の準備段階として行った背側縫線核からの記録にとどまり、当該年度に予定していた黒質網様部からの活動記録には至っていない。また光遺伝学的手法による光照射を伴う記録実験では、光ファイバーと記録電極を同時に使用するため、通常の単一細胞外記録よりもより個体への侵襲性が高い。そのため実験動物の健康状態を吟味しながら慎重に実験を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度以降は、2頭目のサルへのAAVベクターの注入を行う。ウィルス感染後、背側縫線核、黒質網様部において光刺激応答を計測し、ChR2発現の再現性を確認する。また黒質網様部からの神経活動記録を行い、背側縫線核との情報表現の比較を行う。次に黒質網様部を逆行性に刺激し、黒質網様部へ投射するセロトニン細胞を同定する。同定したセロトニン細胞の課題下での応答を記録し、どのような情動信号が行動出力系である黒質網様部へと伝達されているのかを明らかにする。その後、セロトニン投射の機能的な役割を明らかにするため課題遂行下の黒質網様部へ光照射を行い、黒質網様部へのセロトニン投射を活性化する。セロトニン投射の操作により、情動信号が正常に伝達されなくなった場合、獲得されていたストレスへの耐性がどのような影響を受けるのかを解析する。
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Causes of Carryover |
2018年度は、実験用部品への出費が予想よりも多く、設備備品を購入するための予算が足りなくなり、次年度使用額が生じた。翌年度はこの額を合わせ、予定していた設備費の購入、また追加で必要となることが予想される物品費(電極、ファイバーなど)に充てる。
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