2018 Fiscal Year Research-status Report
肥満者や2型糖尿病患者に見られる意志力低下とそのメカニズムの解明
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18K07358
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
田尻 祐司 久留米大学, 医学部, 教授 (80469361)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河原 幸江 久留米大学, 医学部, 准教授 (10279135)
岩田 慎平 久留米大学, 医学部, 助教 (10749526)
野村 政壽 久留米大学, 医学部, 教授 (30315080)
御船 弘治 久留米大学, 医学部, 准教授 (70174117)
大木 剛 久留米大学, 医学部, 助教 (70725118)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 意志力 / グレリン / 食嗜好性 / 報酬系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、グレリン欠損(GKO)マウスがどのような環境変化や課題行動において意志力の低下(行動変化)を示すか調査した。マウス自発運動・摂餌行動解析装置&摂餌嗜好性行動解析装置を用いて、赤外線センサーにより測定チャンバー内の活動量、回転カゴの自発運動量、摂餌量を測定・解析した。 ①摂食スケジュールに関する行動意志力:野生型(WT)マウスでは,摂餌時間を制限すると(時限制限給餌)その時間の開始前に活発に行動するようになる(Food anticipatory activity: FAA)。そこでWTおよびGKO マウスに制限給餌を施行(暗期の開始時と終了時に2時間ずつ)したところ、暗期の終了時において両群ともにFAAの増加を認めたが、GKOのFAAはWTに比べて約半分であり有意の低値を認めた。この事より、motivational activityにおけるグレリンの関与が示された。 ②食の嗜好性に関する行動意志力:両群マウスを測定チャンバーで1週間程度の標準食(CD)に馴化後、2ヶ所に設けた摂餌器の一つを標準食から高脂肪食(60kcal% fat: HFD)に変更した後,食嗜好性の変化を調査したところ、WTでは一定の傾向が認められなかった。しかしながら、GKOでは開始当初認められていたHFDへの強い嗜好性(ほぼ100%)が時間の経過とともに低下して行き、4週間後にはほとんど認められなくなった(CDを50%以上摂食)。このことより、高脂肪食などのpalatable foodに対する嗜好性に、グレリンが関与していることが示された。グレリンの報酬系に対する関与については、次年度以降の研究で明らかにして行く予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度に予定していた3つの計画は下記の通りである。 ①摂食スケジュールに関する行動意志 ②食の嗜好性に関する行動意志力 ③グレリン受容体アゴニストによる介入試験 ①②は予定通り遂行されており、③を次年度に持ち越しているため、上記区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
生体内のグレリンは胃を中心とした消化管で産生されるものが大部分なので,末梢から中枢への神経連絡も重要であると考えられる。末梢でのグレリン投与によって興奮する神経細胞を高感度に検出するために、グレリン受容体をターゲットとしてGFPあるいはモノクローナル抗体などを用いて調査する。 側坐核と同様に大脳辺縁系の腹側被蓋野からドーパミン神経投射を受け、環境変化や行動課題に対する行動応答に重要な役割を担う前頭前野においてドーパミン神経活動を調べる。具体的には、前頭前野にマイクロダイアリシス用のカニューレを設置し、GKOマウスが環境変化や行動課題を行っているときのドーパミン神経放出量の変化を経時的に測定する。これによって環境変化や行動課題を行うときにおけるグレリン欠損の影響を調べることができる。
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Causes of Carryover |
マウス食餌嗜好性解析システム・マウス用摂餌部開閉装置(MFD-RQ-OC,㈱シンファクトリー)を購入したために生じた。これにともない、次年度以降の食嗜好性の調査の進捗が約2倍の速度で遂行可能となる。
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