2018 Fiscal Year Research-status Report
サル半側空間無視モデルにおける視覚的注意と視覚的気づき
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18K07359
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
吉田 正俊 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 助教 (30370133)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 機能的結合 / マイクロサッケード |
Outline of Annual Research Achievements |
マカクザルによる半側空間無視の動物モデルを確立することを目的として、マカクザルで弓状束AFの側頭側起始部である右上側頭回への損傷を行い、到達運動による視覚刺激の探索課題およびフリービューイング中の視線計測のデータの解析を行った。その結果、無視症状を反映した行動が見られることを示唆する結果をさらに得ることができた。また、この動物モデルの視覚的注意と視覚的気づきを定量的に評価することを目的として、トップダウン性の視覚的注意を定量化するために、手掛かり刺激を提示する注意課題(ポズナー課題)の開発を行った。また、フリービューイング課題を用いたボトムアップ性の視覚的注意の定量化方法の開発を行った。視線計測の解析法については、視野角1度以下の微小なサッケード(マイクロサッケード)の解析によって注意の状態を定量化する方法を開発した。その結果、ポズナー課題における手がかり刺激の提示時に、注意状態の変動を反映するようにマイクロサッケードの頻度と方向が変化することを明らかにした(SFN2018でのポスター発表)。健常動物および損傷動物での機能イメージングを用いた安静時脳活動計測に関しては、これまでに行ってきた3テスラマシンでの計測データとその解析に加えて、今年度は生理学研究所で新しく稼働を始めた7テスラマシンでの計測を行った。一頭の健常マカクザルにおいて、イソフルレン麻酔下(1-1.5%)で24chヘッドコイルを用いて全脳からの計測を行った。T1, T2強調画像による構造画像の計測に加えて、T2*シークエンスを用いたEPI画像の計測を行い、3テスラマシンでの計測時よりもより高解像度での全脳での安静時脳活動計測データを取得して、機能的結合を定量化することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記の概要にも示したとおり、トップダウン性の視覚的注意の定量化の方法、ボトムアップ性の視覚的注意の定量化の方法の開発を予定通り行うことができた。さらに視覚性注意の評価方法として当初の計画にはなかったマイクロサッケードの解析による方法の開発を行い、健常動物、盲視モデル動物における解析結果について学会発表をすることができた。また、機能イメージングを用いた安静時脳活動計測に関しては、研究計画の後半での実施を予定していたが、今年度中に生理学研究所で新しく稼働を始めた7テスラマシンでの計測に成功した。以上のことから、当初の計画を前倒しで進めることに成功するだけでなく、当初の計画にはなかった新しい解析法の確立を行うことができた。以上のことから当初の計画以上に進展していると考えることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
並行して進めていたマーモセットの精神疾患モデルの研究が大幅に進捗して、フリービューイング法を用いた視線計測法の確立ができた。また、マーモセットにおける96ch ECoG電極を用いた全大脳記録法の確立ができた。これらによってマカクザルでの損傷部位(右上側頭回)との相同部位(TPO)をマーモセットで同定できるようになった。これらのことから2019年度の研究計画では、マカクザルでは大掛かりになってしまう一時的機能抑制や機能賦活法への実現を目指して、マーモセットを対象動物に加えて研究を行うことにする。
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Causes of Carryover |
当初予定していた費用は190万円ちょうどであったが、対応業者による値下げがあったため、執行残が発生した。
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Research Products
(3 results)