2018 Fiscal Year Research-status Report
マクロファージ機能を標的としたガン性疼痛とガン増殖に効果のある新規治療法の開発
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18K07381
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Research Institution | Daiichi University, College of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
小松 生明 第一薬科大学, 薬学部, 教授 (80368977)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ガン性疼痛モデル / ナノエマルジョン / アロディニア / マクロファージ / ガン増殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
「痛み」は、ガン患者にとって最も頻度の高い症状である。ガン性疼痛の端緒は、マクロファージが腫瘍組織に浸潤しCOX2由来PGE2やサイトカインなど炎症性メディエーターを産生し、これらが一次求心性神経を損傷させ誘発する。加えてマクロファージは腫瘍組織でも機能し、上記の炎症性メディエーターが血管新生因子や増殖因子を産生させガン細胞の増殖を促す。本研究ではガン性疼痛とガン増殖に重要な役割を果たしているマクロファージ機能を活用した、新しい疼痛緩和と腫瘍抑制の治療法の開発を目的とする。申請者らはガン性疼痛とガン増殖に関与しているCOX2の阻害薬セレコキシブ(CXB)と、イメージプローブとして近赤外線吸収色素を封入したO/W型大きさ200 nm以下のナノエマルション(CXB/NE)を開発した。このCXB/NEを疼痛モデルマウスに投与すると、CXB/NEがマクロファージに取り込まれ疼痛部位に伝達され、疼痛が緩和されることをすでに明らかにしている。本研究ではガン性疼痛モデルマウスを用い、CXB/NEがマクロファージを介しガン細胞により障害を受けた神経細胞周辺やガン組織に特異的に送達し、ガン性疼痛とガン増殖を共に抑制する可能性をin vitro・in vivo解析を通じて明らかにする。当該年度では、まず初めに、CXB単独によるガン性疼痛モデルの疼痛行動抑制とガン細胞増殖抑制の評価を検討した。ガン性疼痛モデル作成後、ガン性疼痛においてはvon Freyフィラメントによるアロディニアの評価を経日的に行い疼痛誘発性アロディニアが抑制されるか否かを評価した。またガン増殖においては腫瘍サイズを腫瘍計測装置により経日的に調べることにより腫瘍が抑制されるか否かを評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウスの大腿部を切開し坐骨神経を露呈させ、その周囲にマトリゲルに懸濁させたNCTC腫瘍細胞を移植し、ガン性疼痛モデルの作成を試みた。しかし疼痛評価のばらつきが多く、再現性に乏しかった。そこで、マウスの右後肢足跡内にMeth-A sarcomaを接種するガン性疼痛モデルの作成を検討したところ、疼痛評価の再現性もよく、接種部位のガン細胞増殖も認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
吸入麻酔による全身麻酔下に、ガン性疼痛モデルマウスの腫瘍組織、脊髄(L3-L5神経が投射する部位)を採取し、得られた各組織よりタンパク質を抽出し、疼痛形成やガン細胞増殖に関与する種々のサイトカイン、ケモカイン、PGE2、細胞増殖因子などの標的となるタンパク質の発現解析をウエスタンブロット法やELISA法により経日的に測定する。さらに、疼痛関連物質やガン細胞増殖因子等の発現増加が認められた場合、CXBの処置により疼痛関連物質が抑制されるか否かを経日的に測定する。 CXBによるガン性疼痛モデル動物誘発性の疼痛関連行動と疼痛関連・ガン増殖因子の発現の抑制を解明後、CXBを封入したナノエマルジョン(CXB/NE)を用い、以下の実験を検討する。①ガン性疼痛モデルマウスにおいて、CXB/NEがマクロファージに取り込まれ、選択的に疼痛・腫瘍部位への薬剤を送達できるか否かを検証する。②ガン性疼痛モデルマウスにおいて、マクロファージに取り込まれたCXB/NEが、持続的に疼痛関連物質を抑制し、持続的に疼痛関連行動を抑制できるか否かを検証する。③ガン性疼痛モデルマウスにおいて、マクロファージに取り込まれたCXB/NEが、持続的に細胞増殖因子を抑制し、持続的に造腫瘍形成を抑制できるか否かを検証する。CXB/NEにより、マクロファージを介しCXBを疼痛部位やガン組織に選択的に送達することができれば、より少ないCXBの用量で疼痛緩和やガン細胞の増殖抑制が可能となり、またCXBによる全身性の副作用を最小限にし、今までNSAIDsを用いることができなかった患者においても有望な治療となることが期待される。
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Causes of Carryover |
共同研究者との研究打ち合わせに要する旅費と共同研究者に対する謝礼に使用。
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Research Products
(4 results)