2019 Fiscal Year Research-status Report
オピオイド製剤の耐性、副作用発現を克服する新規μ/δ二量体特異的アゴニストの創製
Project/Area Number |
18K07404
|
Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
上園 保仁 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (20213340)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮野 加奈子 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (50597888)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | オピオイド受容体 / GPCR / 二量体 / オピオイド耐性 / μδヘテロマー |
Outline of Annual Research Achievements |
医療用麻薬であるオピオイド鎮痛薬は多くのがん患者の疼痛制御に用いられるも、長期使用により耐性、依存性、および便秘、呼吸困難などの副作用を惹起するため、安定的な鎮痛作用を維持する上で副作用の少ない新規オピオイドの創製が大きな課題となってきた。近年μ、δ、κからなるオピオイド受容体が二量体を形成し、中でもμ/δ二量体化受容体選択的アゴニストとして見出されたML335がオピオイド耐性、および副作用を引き起こしにくいことが報告され、副作用の少ないオピオイド鎮痛薬として二量体化受容体特異的アゴニストの製剤開発が注目されている(PNAS, 110: 12072-, 2013)。しかしながら私たちの解析では、ML335はμ/δ受容体のパーシャルアゴニストであることが判明し、さらに同薬をベースとした臨床開発は現時点で行われていない。 これらの点を鑑み、研究代表者はμ、δアゴニスト骨格に基づく新規概念に基づき合成された新規化合物を用いて、研究代表者の開発したμ/δ二量体化受容体を選択的にアッセイできる手法を用い、新規に合成されたμ/δ二量体選択的アゴニストのスクリーニングを行った。その結果、μ受容体およびδ受容体自身への親和性が低く、μ/δ二量体化受容体に対してはML335の親和性を上回るμ/δ二量体化受容体に選択的な化合物を100種を超える新規化合物の中から9種見出すことができた。さらにこれらの化合物の作用活性の詳細な解析を行ったところ、ML335のEC50と比較し、高親和性の化合物4種、すなわち低濃度で効果を発揮するμ/δ二量体選択的な候補化合物を見出すことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度にμ/δ二量体化受容体アゴニストをスクリーニングし、候補化合物を得て、新たな活性を有する新規化合物の合成に成功し、詳細な解析によりML335のμ/δへの活性を大きく上回る4つの化合物を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
すでに発表されているμ/δ二量体化受容体アゴニストML335を上回る活性を有する選択的μ/δ二量体化受容体アゴニストを4つ見出すことができた。今後は、1) それらの化合物の構造―活性相関に基いて更なる化合物の創製をめざす。2) 同化合物を用いて鎮痛に対する動物実験を行う。並行して3) 有望なシーズ確保のため、3Dシミュレーション設計に基づき新たに合成を展開していく。最終的に得られた開発候補化合物を用いて、鎮痛薬製薬企業と臨床開発を行うための共同研究提案を行う。本研究では候補化合物の非臨床試験をμおよびδ受容体の3D構造解析を得意とする研究者に協力を仰ぎながら研究を行い、最終的に4) First in human(FIH)試験を行う段階まで研究を進めるための基盤研究を行っていく。
|
Causes of Carryover |
平成31年度、令和元年度は作成された化合物を用いてスクリーニングを行い、候補化合物を同定できた。今後1) 同化合物の構造-相関関係に基づく新規化合物の創製、2) 化合物の構造解析、3) 動物実験による鎮痛評価を行う予定をしているが、これらには経費がかかる。そのため最終年度に予算を繰り越すこととした。
|