2020 Fiscal Year Research-status Report
骨髄微小環境下の白血病細胞の生存戦略「代謝制御」解明による新しい高齢者がん対策
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18K07424
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
田部 陽子 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70306968)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三井田 孝 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80260545)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 急性骨髄性白血病 / 白血病微小環境 / エネルギー代謝 / 酸化的リン酸化 / ミトコンドリア / tunneling nano tube / マイトファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
白血病は高齢者に多発する疾患で、治療後の再発が多い。これは、臓器予備能が低い高齢者に対して強力な抗がん剤治療を行うことができず、その結果、多数の白血病細胞が骨髄「微小環境」に生き残って治療抵抗性を獲得するためである。骨髄中の白血病細胞は、自ら作り上げた低栄養、低酸素状態の「白血病微小環境」の中で、独特のエネルギー代謝や低酸素環境への適応力を獲得する。微小環境中における白血病細胞のエネルギー制御について理解することは、白血病の再発防止に必須である。本研究では、白血病細胞の生存力の軸となる酸化的リン酸化の制御機構を解明することを目的とする。当該年度の研究では、前年度までの研究結果に基づいて、酸化的リン酸化阻害後の白血病細胞と骨髄間質細胞間のミトコンドリア授受および白血病細胞内での機能的ミトコンドリアの維持機構について研究を行い、酸化的リン酸化阻害に対する白血病細胞の代謝適応、生存機構の解明を目指した。その結果、酸化的リン酸化代謝を阻害された白血病細胞は、骨髄間質細胞に接着し、両細胞を結ぶtunneling nano tubeを形成した後、GAP junctionまたはtunneling nano tubeを介して骨髄間質細胞から活性ミトコンドリアを受け取るとともに白血病細胞内ではミトコンドリアの分裂が誘導されることが明らかになった。 また、骨髄間質細胞由来のミトコンドリアを含め、白血病細胞内でのマイトファジーが亢進した。 これらの知見は、エネルギー代謝を抑制された条件下で、白血病細胞が骨髄微小環境を構成する間質細胞から外因性ミトコンドリアの供給を受け、細胞内においてミトコンドリアの分裂とマイトファジーを介して機能的なミトコンドリアを維持することを示唆する。 このような骨髄微小環境におけるミトコンドリア機能維持が白血病細胞の酸化的リン酸化抑制耐性に作用すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに実施したトランスクリプト―ム解析、代謝動態解析、共焦点顕微鏡解析において、①骨髄微小環境内での白血病細胞と骨髄間質細胞間の相互作用(細胞接着、遊走、細胞骨格変化など)に関わる遺伝子発現が酸化的リン酸化阻害剤耐性細胞で上昇していること、②骨髄間質細胞と接着する白血病細胞では、酸化的リン酸化阻害剤によるミトコンドリア呼吸能の抑制が少なくなり、形態学的にはtunneling nano tubeを形成して骨髄間質細胞と連結すること、がわかった。そこで、本年度の研究では、酸化的リン酸化阻害に対する白血病細胞の代謝適応、生存機構を明らかにするため、電子顕微鏡解析、WesternBlot解析、ミトコンドリア膜電位解析等を実施した。その結果、①電子顕微鏡解析によって、骨髄間質細胞と共培養された白血病細胞において酸化的リン酸化阻害後に間質細胞に接着している白血病細胞が間質細胞の隙間に突起を形成し、その突起先端へミトコンドリアが移動すること、白血病細胞内のミトコンドリア数が増加すること、が観察された。②WesternBlot解析では、骨髄間質細胞と共培養された白血病細胞において酸化的リン酸化阻害後にマイトファジーが亢進することが明らかになった。さらに③ミトコンドリア膜電位を測定した結果、骨髄間質細胞との共培養条件下の白血病細胞においては、酸化的リン酸化阻害が、ミトコンドリアの分裂を誘導し、総ミトコンドリア数と機能ミトコンドリア数の正味の増加をもたらすことが示された。これらの知見より、エネルギー代謝を抑制された条件下で、白血病細胞が骨髄微小環境を構成する間質細胞から外因性ミトコンドリアの供給を受け、細胞内においてミトコンドリアの分裂とマイトファジーを介して機能的なミトコンドリアを維持することが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、骨髄微小環境の中で生じる骨髄間質細胞との相互作用によって急性骨髄性白血病細胞が獲得する薬剤耐性について、実際に治療で用いられている化学療法剤と酸化的阻害剤の組み合わせで生じるエネルギー代償機構を明らかにすることによって、新たな治療戦略としての酸化的リン酸化阻害の有用性と限界を検証する。また、マウスin vivoモデルを用いて酸化的リン酸化阻害剤に対する感受性、耐性細胞が示す治療前後の遺伝子発現およびミトコンドリアDNA量の変化について検討を行う。
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Causes of Carryover |
前年度までの成果において、AML症例を増加して実施したトランスクリプトーム解析の結果がそれまで得られた結果と異なり、当初焦点を当てていたエネルギー代謝の変化から細胞接着や細胞骨格に関わる遺伝子発現の変化が検出され、形態学的にもtunneling nano tubeの形成が観察されるなどの知見が得られた。そこで、共焦点顕微鏡のみでなく、電子顕微鏡を用いた細胞内ミトコンドリアの形態学的検討を追加実施し、ミトコンドリアの機能解析をあらたに行った。今後、in vivo実験を進めていく予定であり、これによって次年度使用額は、適正に使用される。
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] BCL2A1: a novel target in refractory acute myeloid leukemia with FLT3-ITD/D835 dual mutations2020
Author(s)
Kotoko Yamatani, Tomohiko Ai, Kaori Saitoh, Haeun Yang, Sonoko Kinjo, Kazuho Ikeo, Vivian Ruvolo, Po Yee Mak, Hironori Harada, Kazuhiro Katayama, Yoshikazu Sugimoto, Takashi Miida, Marina Konopleva, Weiguo Zhang, Bing Z. Carter, Yoshihide Hayashizaki, Michael Andreeff, Yoko Tabe.
Organizer
American Society of Hematology Annual Meeting
Int'l Joint Research
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[Presentation] The direct interactions with bone marrow microenvronment confer resistance to the inhibition of Oxidative Phosphorylation in AML2020
Author(s)
Yoko Tabe, Kaori Saitoh, Kotoko Yamatani, Haeun Yang, Rodrigo Jacamo, Helen Ma, Vivian Ruvolo3, Qi Zhang, Vinitha Kuruvilla, Natalia Baran, Junichi Imoto, Kazuho Ikeo5, Kaori Moriya, Yuko Murakami-Tonami, Koya Suzuki, Takashi Miida, Michael Andreeff, Christopher P. Vellano, Joseph R. Marszalek, Marina Konopleva
Organizer
American Society of Hematology Annual Meeting
Int'l Joint Research