2022 Fiscal Year Research-status Report
認知症における発症防御因子;認知予備能の意義とその神経基盤
Project/Area Number |
18K07427
|
Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
吉澤 浩志 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (70318070)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北川 一夫 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (70301257)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 認知予備能 / 認知症 / 神経心理検査 / 神経機能画像 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では軽度認知障害(MCI)および初期Alzheimer病(AD)患者において、MRI.T1.3D撮影による脳局所体積測定、MRI拡散テンソル画像(diffusion tensor image; DTI)による神経白質変性の定量評価、安静時機能的MRI(rsfMRI)による機能的結合性解析、および脳血流測定を行い、神経心理検査の推移と比較検討し、併せて認知予備能の影響につき考察することを目的としている。認知予備能に関しては、金沢大学認知科学研究室が開発した認知予備脳評価CRIq-Jのデータ収集をしている。対象はCDR≦1のMCIないし軽症AD患者であり、すでに162症例の登録時横断解析は終了し、現在追跡を行っている。今回、登録時解析可能なデータ欠損のない144症例(CDR1群54名, CDR0.5群52名, CDR0群38名)を対象とし、すべての画像解析を終了し横断解析を行った。17項目の神経心理検査を因子分析にかけたところ、記憶、言語、遂行機能、注意の4因子に分類され、それぞれの因子得点に関与する脳部位の同定を行った。記憶は後部帯状回の血流、海馬の萎縮、脳梁・帯状回の白質線維束の低下、左前頭側頭葉の機能的結合性の低下に関与した。言語は左前頭葉背外側の血流低下、左側頭葉・両側弁蓋部の萎縮、前頭側頭頭頂葉の白質線維束の低下、左前頭葉言語野と左側頭葉の間の機能的結合性の低下に関与した。遂行機能は両側前頭葉下部の萎縮、前頭側頭頭頂葉の広範な白質線維束の低下に関与したが機能的結合性は同定できなかった。注意は右島・右視床の血流低下、両側眼窩回・海馬の萎縮、脳梁・帯状回の白質線維束の低下、背側注意領域と右側頭葉・島との機能的結合性の低下に関与した。このように認知機能の各ドメインは、萎縮、血流、線維束密度、機能的結合性のそれぞれに関して、異なる脳内局在を反映していると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
症例のentryは研究期間中に発生したコロナパンデミックの影響で一時中断せざるを得なかったが、最終的に2年ほどの追加期間を含めて合計162例にて終了し、当初予定より多数例の症例が組み込まれた。 現時点で162例中96例のみが3年後の経時評価を終了している。導入が遅れていた認知予備脳の評価法も令和元年から軌道に乗り、順調に聴取されている。当初予定にて一昨年に終了している予定であった3年後経時評価は、来年度ですべての対象者で観察期間を終了し縦断解析に移る予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度ですべての対象者で3年間の観察期間を終了し縦断解析に移る予定である。予定してたFDG-PETに関しては、ECDによる脳血流SPECTにて相当の結果が得られたため、すでに全例撮像している3D-T1, 3D-FLAIRにより、新たに虚血性変化の容積測定を追加し、認知機能に対する脳血管因子の関与にも検討を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
今年度収集を終了する3年後経時変化のデータを含めて、すべての画像統計解析を終了する。その際、予定してたFDG-PETに関しては、ECDによる脳血流SPECTにて相当の結果が得られたため、すでに全例撮像している3D-T1, 3D-FLAIRにより、新たに虚血性変化の容積測定を追加し、認知機能に対する脳血管因子の関与にも検討を進める予定であり、株式会社マイクロン社によるICOBRAIN(有償)を用いて新たな解析を予定している。
|