2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K07434
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
千葉 仁志 北海道大学, 保健科学研究院, 名誉教授 (70197622)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Keap1-Nrf2活性化物質 / 抗酸化 / リゾリン脂質 / LPE |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、我々がリゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)にKeap1-Nrf2経路活性化能を偶然に発見したことから発想し、LPE分子がKeap1-Nrf2経路の活性化を介して細胞を酸化ストレスから保護する内因性抗酸化シグナル分子であることを明らかにすることを目指している。2018年度は、本課題に必要なLPE分子種、LPE-decanoyl, -hexadecanoyl, -alpha-linolenoyl, -gamma-linoleoyl, -linoleoyl, -pinolenyl, -oleoyl, -arachidonyl, -eicosapentaenoyl (EPA), -docosahexaenoyl (DHA)の化学合成に成功した(Yamamoto Y, et al. Chemistry and Physics of Lipids, 216:9-16, 2018; 山本祐輔, 「フッ素置換構造を鍵としたリゾリン脂質異性体の合成と物性に関する研究」, 第58回日本臨床化学会YIA賞)。 2019年度は、1)LPE分子のラジカル吸収能試験と、2)LC/MSによるLPE定量系の開発、3)酸化ストレス負荷時の細胞内LPE濃度の変動の検討を計画していた。1)のラジカル吸収能試験に関しては、LPE-EPAとLPE-DHAはORAC試験で低値であった。即ち、LPE分子のラジカル吸収能は低いことが明らかとなった。このことは、LPE分子が主にNrf2依存性に抗酸化能を発揮することを示している。2)LPE定量法に関しては、2018年度に合成した種々のLPE分子種と内部標準物質を用いるLC-MS/MS法(内部標準法)を確立し、現在は論文投稿準備中である。3)酸化ストレス負荷時の細胞内LPE分子の変動に関しては、実験2)に時間を要して進捗がやや遅れており、2020年度内に細胞実験を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
リゾホスファチジルエタノールアミン(LPE)の標準物質および内部標準物質を化学合成により得られたが、分子種ごとに安定性が違っていたため、すべての分子種を取り揃えるには時間が要した。また、LC/MSによるLPE定量系の確立にも時間を取られたため、当初の計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)LPEの刺激シグナル、産生経路の検討を行う。酸化ストレス応答シグナルとの関係:酸化ストレス応答シグナルERK、Akt、JNK、PLAの変動をWB、シグナル阻害剤を用いて観察し、LPEとの関係を検討する。 2)LPEの肝細胞に及ぼす影響の検討を行う。炎症・線維化・アポトーシスの関連マーカーの発現、細胞生存能、ミトコンドリア脂質(カルジオリピン)の変動、これらとLPEの関係を肝細胞で検討する。 3)非アルコール性脂肪肝炎(NASH)との関連性を検討する。脂肪酸を負荷して肝細胞に脂肪滴を作製し、脂肪滴のクオリティ(粒子径)とLPEの挙動との関連を観察する。大型脂肪滴を持つ脂肪肝は予後が悪いと考えられている。
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Causes of Carryover |
2020年度には、細胞抗酸化実験を安定に進めるための物品費が必要である。また、質量分析法を用いて細胞中のリゾリン脂質の濃度を測定するため、カラムと溶媒及び質量分析機器の機能維持に関する物品費が必要である。 さらに、研究成果を学会で発表して研究者と意見交換をするため、国内外学会旅費が必要である。現時点で予定している学会は、日本臨床化学会、日本脂質生化学会、ICBL(国際脂質生化学会)、SfRBM(アメリカレドックス生物医学会)などであるが、研究の進捗に応じて変更する可能性がある。
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