2020 Fiscal Year Research-status Report
終末期に近づく高齢者の生理学的バイオマーカーの確立とその応用
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18K07440
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
山口 泰弘 自治医科大学, 医学部, 教授 (60376473)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 寛 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (10361487)
石井 正紀 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20724438)
長瀬 隆英 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (40208004)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 呼吸リズム / 慢性心不全 / 虚血性心疾患 / 心房細動 / 睡眠時無呼吸 / 加齢 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、既に存在する終夜睡眠ポリグラフ検査結果をもとに呼吸リズムの定量化を試みた。具体的には、脳波により安静閉眼覚醒状態を判定し、さらに筋電図にて粗大な体動のないこと、体位センサーにより仰臥位にあることを判定し、これらの条件をみたした3分30秒の鼻口センサーのサーミスターの記録を、5Hzでデジタル化した。本データより、高速フーリエ変換を応用して得られた振幅スペクトルA(f)に対して、0.1-0.7Hzの範囲でシャノンのエントロピーS(entropy S)を算出し、呼吸リズムの不規則性を定量化した。上記の条件を満たす3.5分の呼吸リズムを2回抽出できる患者について、それぞれの呼吸から算出したentropy Sの相関を評価したところ、全体として良好な相関を示した。呼吸リズムのentropy Sは、無呼吸低呼吸指数やBody mass indexと相関した。さらに重要なことに、無呼吸低呼吸指数、BMIなどとは独立して、虚血性心疾患の既往、心房細動、慢性心不全、大動脈解離の既往のある患者で気流波形のentropy Sは有意に高値であった。entropy Sと血漿BNPも有意に相関した。これまでにも、比較的重症の心不全患者における呼吸リズムに注目した研究はみられるが、本研究において、臨床的に心不全と診断・治療されてない患者群でも、既に呼吸リズムの不規則性がみられることが示された。さらに興味深いことに、心疾患患者のなかで、呼吸リズムのentropy Sが高値である患者は、その後の心血管イベントが有意に多かった。一方、予想に反して、気流波形のentropy Sは、心疾患を有さない群では、年齢とともに低下した。すなわち、呼吸リズムは高齢者でむしろ規則的になることが示唆された。なお、我々の研究では、気流波形のentropy SとCPAPアドヒアランスとの間には関連はみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
呼吸リズムの定量化の再現性を検証することができた。本研究において、臨床的に心不全と診断・治療されてない患者群でも、既に呼吸リズムの不規則性がみられることが示されたこれまでに報告されていない知見である。さらに、呼吸リズムの加齢変化についての報告も過去に全くないが、我々は、心疾患を合併しない高齢者では、むしろ呼吸リズムは規則的であることを発見しえた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、これまでにえられた後向き研究での成果を英文学術論文として投稿中である。さらに、我々は、既に、対象群全体あるいは心疾患を有する患者群において、呼吸リズムの不規則性が強い患者ほど心血管イベントが多く起こっていることを見出しており、これらについても症例数を増やして学術論文にまとめる計画である。さらに興味深いことに、心疾患を有する患者を除くと、高齢者ほど呼吸リズムは規則的であった。サバイバルエフェクトなど、その原因は複数考えられ、前向き研究により明らかにする計画である。
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Causes of Carryover |
得られた研究成果が投稿中のため、追加の研究のために次年度使用額が生じた。
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