2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K07444
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 浩靖 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (00631201)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木原 進士 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (20332736)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アポタンパク / 自己抗体 / 動脈硬化 / 脂質代謝異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
1970年代より疾患概念が提唱されている自己免疫性脂質異常症の診断法は未確立である。これまでに我々が発見したlipoprotein lipase (LPL) や apolipoprotein C-II (apo C-II) に対する自己抗体に関連する自己免疫性脂質異常症症例を元に、2015年より本邦ではこの2つの自己免疫性脂質異常症が難病に指定されることとなったが、その実態は明らかではない。
そこで本研究では、LPL、apo C-II、及びその他の脂質代謝に関わる分子を対象とした自己免疫性脂質異常症の診断法の開発を1つの目的とした。自己免疫性脂質異常症が疑われるものの確定診断が得られないために我々の研究室に寄せられた他の医療機関からの臨床血液検体を用い、その脂質・アポタンパク質プロファイルをもとに対象となる脂質代謝関連分子を決定し、自己免疫的機序の関与を検索している。また多数検体を用いた解析も行っている。
さらに、脂質異常症に随伴しやすい動脈硬化症や心血管疾患を対象とし、脂質代謝関連分子に対する自己抗体の臨床的意義を検討した。LDL-コレステロールは動脈硬化・心血管疾患の確立されたリスク因子であり、その粒子上に存在する主要なアポタンパクapo B-100を対象とし、動脈硬化性疾患発症のリスクの高い糖尿病症例での抗アポB-100自己抗体の動脈硬化性疾患との関連を検討した。また、糖尿病性腎症と診断されている症例における 抗apo C-II、抗apo E自己抗体の意義についても検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NTT西日本大阪病院糖尿病・内分泌代謝内科通院中の糖尿病症例の残余血液検体を用い、抗apo B-100自己抗体をhome-made ELISA法にて測定した。Apo B-100分子のLDL粒子外側に表出している領域に存在する2つのペプチド(p45, p210)とその酸化型としてマロンジアルデヒド処理したペプチドを抗原としたELISA系を構築し、抗アポB-100自己抗体を測定した。この抗体価と糖尿病細小血管合併症の臨床病期、大血管合併症の有無との相関を統計学的に検討した。抗apo B-100自己抗体価は、LDL-コレステロール値と有意な逆相関を示し、動脈硬化性疾患を有する群で有意に低値であった。また、この相関はスタチン服用群でより顕著に認められた。さらに、ロジスティック回帰分析を用いた解析から、酸化型p210に対するIgGクラスの自己抗体価は動脈硬化性疾患と最も強く関連する独立した因子であることがわかった。従って、スタチン使用によりLDL-Cが良好にコントロールされているような症例の中でも、酸化型p210に対するIgGクラスの自己抗体価が低値である症例では動脈硬化リスクの高い症例として注意深くフォローする必要があると考えられた。 また、同じ症例を対象として抗apo C-II抗体、抗apo E抗体をhome-made ELISA法で測定するとともに、血中の自己抗体を免疫沈降・ウエスタンブロット法で検出し、臨床パラメータとの関連を解析した。その結果、顕性タンパク尿が出現する腎症3期の症例の一部に抗apo C-II抗体、抗apo E抗体自己抗体値高値症例が存在していることがわかった。糖尿病腎症と診断されている症例の中に、自己抗体を介したapo C-IIやapo Eの凝集に伴うアミロイド腎様の機序を有する症例が混在している可能性が考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
抗apo B-100自己抗体がLDL-コレステロール代謝に深く関連していることが明らかになったため、apo B-100以外のコレステロール代謝に関わる分子として、LDL-R、LDL、PCSK9などを対象としたELISA系を構築することを予定している。また中性脂肪代謝に関わる分子では、apo C-IIやapo Eに対する自己抗体測定ELISA系が構築されたため、apo C-IIIやapo A-V、GPIHBP1に対する自己抗体測定系も検討する。これらのELISA系を用いて、脂質異常症が随伴しやすい疾患である動脈硬化性疾患(脳・心血管疾患)、糖尿病や自己免疫疾患患者など、さらに検体数を増加させた多数検体を用いて、その実態の検討につなげる。これらの自己抗体の臨床的意義については、自己抗体値と各種臨床パラメータとの相関を統計学的に検討する。解析する臨床指標としては、血液生化学データのみならず、冠動脈造影や血管内超音波画像などから得られる画像的パラメータをもとにした動脈硬化性疾患の重症度なども用いる。 また、近年では免疫疾患や癌の新たな治療として免疫系を制御する薬剤が多用されるようになっているが、自己免疫性疾患の発症増加が指摘されており、このような症例を用いたでの治療前後での解析も行っていく。
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Research Products
(7 results)