2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K07482
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
丸岡 秀一郎 日本大学, 医学部, 准教授 (80599358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
権 寧博 日本大学, 医学部, 教授 (80339316)
釋 文雄 日本大学, 医学部, 助教 (90647976)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 気道上皮バリア機能 / 神経ペプチド / 心理社会的ストレス / ストレス耐性 / 喘息 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、 喘息病態形成に重要な神経ペプチドと気道上皮細胞のバリア機能に着目し、ストレスが、どのように気道局所に作用し、喘息の病態形成に関与しているのかを明らかにし、診断、治療につながる臨床的意義を見出すことである。令和元年度は、下記にあげた研究項目1.2.3.について研究を実施し、以下の研究計画の進展を得た。 研究項目1:(神経ペプチドによる気道上皮バリア機能への影響)前年度にアデノシン三リン酸(ATP)による気道上皮バリア機能形成促進をPAC1遺伝子特異的siRNAで抑制したことを見出した。さらに詳細に検討を重ね、その成果を第68回日本アレルギー学会学術大会、第2回日本心身医学関連学会合同集会にて発表した。また、申請者はPAC1以外のストレス耐性遺伝子についても着目し、その中の1つであるFK506 binding protein 5(FKBP5)についても同様の研究を進め、FKBP5特異的siRNAによる遺伝子ノックダウンにより上皮バリア機能が減弱を確認した。 研究項目2:(ストレスによる喘息増悪モデルと神経ペプチド)ストレス負荷(母子分離ストレス、拘束ストレス)時の気道局所の神経ペプチドを確認するために、マウスを用いたストレス負荷モデルを作成した。その過程で、拘束ストレスの負荷量によりストレス耐性を誘導し、ダニアレルゲンによるアレルギー性気道炎症を抑制する反応を認めた。その成果を第2回日本心身医学関連学会合同集会にて発表した。 研究項目3:(神経ペプチドの臨床的意義)臨床におけるストレス誘導性喘息の分子病態と神経ペプチドの関与について、先行研究報告を踏まえた概要を第68回日本アレルギー学会学術大会、第2回日本心身医学関連学会合同集会のシンポジウムで発表した。また、喘息病態を解明する観点から幅広く喘息関連の臨床研究を行い、学会、研究会および論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究項目1:(神経ペプチドによる気道上皮バリア機能への影響) PAC1は上皮バリア機能形成に不可欠であることは証明できたが、リガンドであるPACAPによるバリア増強が確認できていない。また、NMU(喘息病態形成に重要な2型自然リンパ球(ILC2)のリガンド)についても同様にバリア機能を測定したが、増強および減弱する反応は得られなかった。遅れている状況である。 研究項目2:(ストレスによる喘息増悪モデルと神経ペプチド) 母子分離ストレスは繁殖の問題があり、時間と十分なマウスの頭数を維持することが困難であり、データにばらつきが生じてきた。また、拘束ストレスにおいてはその負荷量によりアレルギー性気道炎症を抑制した。ストレス耐性を獲得した可能性がある。安定した条件を設定するのに難渋している状況である。構築したマウスによる気道上皮バリア機能測定系は、ダニアレルゲンの経気道投与によって、仮説とは逆にバリア増強を誘導した。防御機構が働く可能性が示唆された。遅れている状況である。 研究項目3:(神経ペプチドの臨床的意義) 喘息患者における心身症的側面を抽出することを目的に開発された質問紙票(「気管支喘息症状調査票」「喘息の発症と経過に関する調査票」)を多施設共同で再検証する予定となった。そのため当初予定していた臨床研究が開始できていない状況である。共同の研究を行う前に、喘息患者において心理社会的ストレスによる呼吸困難感を有する患者を抽出することを目的とした「ナイメーヘンスコア」の臨床研究は開始できている。遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究項目1:(神経ペプチドによる気道上皮バリア機能への影響)PACAPはペプチドの長さによって作用が異なる報告があり、ペプチド長の異なるPACAPで再検証する。また、先行研究では神経ペプチド(NMU)の単独刺激では喘息は誘導されず、何らかの免疫賦活作用を有している可能性がある。気道上皮細胞とマスト細胞、ILC2などとの共培養による上皮バリア機能も検討する。さらにFKBP5をはじめとしたPAC1以外のストレス耐性遺伝子についても並行して解析していく予定である。 研究項目2:(ストレスによる喘息増悪モデルと神経ペプチド)これまで使用していたC57BL6Jマウスからアレルギー性気道炎症を惹起しやすい報告のあるBALBcマウスに変更して安定したモデルの再構築を行う。また、喘息モデルにおける神経ペプチド(PACAP, NMU)とその受容体(PAC1, NMUR1)の肺局所における産生および発現を検証し、さらに網羅的遺伝子発現解析につなげていく予定である。神経ペプチドの免疫賦活作用の有無についても抗原との同時感作モデルで検討する。 ストレス耐性モデルについても神経ペプチドおよびストレス耐性遺伝子の発現などで並行して検証していく。更にマウスによる気道上皮バリア機能測定系を用いて、ダニアレルゲンの鼻腔感作も検討していく。 研究項目3:(神経ペプチドの臨床的意義)令和2年度は、より簡便なQOL、不安、抑うつ傾向の有無、前述のナイメーヘンスコア、唾液中のストレスマーカー(コルチゾール、アミラーゼ、IgA)と喘息患者の重症度に着目した臨床研究の申請を予定する。また、ストレス耐性遺伝子と喘息重症度に着目し、喘息患者の末梢血球を用いた遺伝子発現、DNAメチル化などの解析、血清中の神経ペプチドとの相関についても検証していく。
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