2020 Fiscal Year Research-status Report
老年期にある高血圧患者の、認知機能保持のための至適血圧の解明
Project/Area Number |
18K07489
|
Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
清水 敦哉 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院, 部長 (50345914)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 高血圧管理 / 認知機能保持 / 高齢者 / 大脳白質病変 / 血圧 / 左室拡張障害重症度 / フレイル |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究は、対象者を加齢性脳変性である大脳白質病変重症度に基づいて層別化し、患者群ごとの高血圧管理状況と認知機能との関係性を追跡することによって、認知症の発症と悪化を予防し得る至適血圧域を明らかにすることを目的として、縦断追跡を継続中である。対象患者を当施設循環器科定期通院患者として登録を進めたが、2018年度中の登録症例数が予定と比べて少なかったため、登録期間を2019年度まで延長することとした。その結果2020年度終了時点で157症例分のデータが、そして2021年度中には70症例分のデータが得られることとなり、最終的には227名のデータとなる予定である。なお2020年度より、施設内研究部門であるロコモフレイルセンターとの研究協力体制が整ったため、高次脳機能解析のための専門職の雇用が2020年度は不要となり、さらにCOVIDの蔓延により当初予定していた国際学会発表が全て中止となったため、研究は継続していたものの、2020年度には研究費支出はなかった。なお2020年度終了時点の157症例分のデータを用いた途中解析により、左室拡張障害重症度が大脳白質病変増悪の予測因子であることが判明したため、同内容を論文化し報告予定である。 【解析結果の概要】2020年度終了時点の157症例を検討対象とした。対象者平均年齢は69.6歳、平均観察期間は4.6年であった。大脳白質病変の変化割合を中央値で2群に分類し、共変量をE/e’、e’、TRflow、LAVI、LVEF、baPWV、IMT、ABPMから得られた平均収縮期血圧(それぞれ総合、日中、夜間)、BNP、HbA1c、eLDL-C、eGFR、性別、BMIとして、二項ロジスティック回帰分析を実施した。その結果、左室拡張障害重症度指標であるE/e‘のみが有意な予測因子(p=0.001)であり、さらに判別的中率は62.0%であると判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の申請段階で、国立長寿医療研究センター・循環器内科へ定期通院している80症例を対象としたデータを確保していた。研究受理後の2018年度~2019年度中に147症例を新規登録したことにより実際の登録症例数は227症例となり、当初の目標症例数(200症例)を達成し得た。一方で新規登録症例147症例中、70症例が2019年度中の登録であったため、2020年度終了時点で解析可能な症例数は157症例に留まり、当初計画から1年程度最終解析が遅れる見込みとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度も70名分の大脳白質病変の定量的評価を継続して実施することにより、本研究主題である認知症の発症と悪化を予防し得る至適血圧域を最終的に明らかとする予定である。 一方、近年認知症同様に高齢者で問題となりつつある虚弱(フレイル)に関する評価を、本研究対象者に対して昨年度より開始(2021年度6月までにはおよそ100名の評価が終了)しており、本研究終了時にはこれも併せて報告することを企画している。
|
Causes of Carryover |
予定通り申請研究は継続していたものの、2020年度は施設内研究部門であるロコモフレイルセンターと研究協力体制が整ったため、当初予定していた高次脳機能解析のための専門職の雇用が不要となった。そしてこのような状況のために、2020年度の研究費の支出はなかった。一方で本年度は、脱落者抑制のための電話要員とデータ入力要員に対しての人件費、そして昨年度COVID蔓延のために自粛した学会発表の再開を予定しており、これらを主体として2021年度中に残予算を費消予定である。
|
Research Products
(17 results)