2018 Fiscal Year Research-status Report
A novel therapeutic strategy for ALS with induction of differentiation to M2 microglia by targeted gene delivery
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18K07498
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
寺島 智也 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (40378485)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / ミクログリア / ドラックデリバリーシステム / 標的化輸送 / 核酸医薬 / miRNA / Molecular ZIP code |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性神経変性疾患の一つである筋萎縮性側索硬化症 (以下ALS) は、確立された治療法がなく、早期の治療法開発が切望されている。近年、ALS病変部位である脊髄組織内で、神経細胞以外のアストロサイトや炎症細胞、ミクログリアなどが、病因に深く関わっていることが報告されており、非細胞自律性神経細胞死 (non-cell autonomous neuronal death)として、ALSのみならず神経変性疾患全般に認められる現象として注目を浴びている。それら神経細胞を取り巻く細胞のうち、ミクログリアは、その特徴により様々なタイプに分類され、大きく炎症を惹起するタイプ (炎症惹起型:M1)と細胞を保護するタイ プ(神経保護型:M2)に分けて考えられている。また、このミクログリアは、脊髄病変部位に多数集積することが報告されており、病態に深く関与しており、 広く研究されている。そこで、我々はミクログリア細胞に対してMolecular ZIP codeを用いたピンポイントなターゲッティン グによる遺伝子輸送システムを用いて、ALS脊髄組織内に集簇するM1ミクログリアをM2ミクログリアへと誘導することによる、正常組織や細胞への安全性に配慮し たALSへの新しい治療技術を確立することを目指す。 初年度は、まず、当初の予定通り、培養条件での検討を行った。ミクログリア標的 Molecular ZIP codeとmiRNA-124, miRNA-145,の複合体を生成し、初代培養ミクログリアへの遺伝子導入効率、M2ミクログリアへの誘導効果を検証し、それらを証明した。また、誘導されたM2ミクログリア培養上清による神経細胞保護効果も証明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生後 1-2 日のマウス新生児大脳より単離した混合グリア培養を14 日間行い、初代培養ミクログリアを準備。 得られたミクログリアにFITCでラベルしたミクログリア特異的結合ペプチド(M1 ペプチド:C-HHSSSAR-C)を投与し、結合実験を施行。コントロールに比し、有意に結合することを確認。次に、M1ペプチドに9 つのアルギニン(R)連鎖(正電荷に富む)を連結したペプチドを用意し、合成委託したmiR-124, miR-145との複合体をそれぞれ準備。M1 peptide+miR124, M1 peptide+miR-145を初代培養ミクログリアに投与し、遺伝子発現効率について検討した。miRNAのみ、およびリポフェクタミンによる遺伝子導入群と比較して、M1ペプチド使用により、有意に遺伝子導入効果があることをmiRNAのQPCRにて確認した。M1 peptide+miR124, M1 peptide+miR-145投与いずれにおいても、ミクログリア内でFIZZ、IL-4遺伝子の発現上昇を認め、M2ミクログリアへ誘導されていることが確認できた。また、同時に、miRNA124,miR145の遺伝子導入により、ミクログリアがどのような遺伝子群に影響を及ぼすかを調べるために、遺伝子導入後ミクログリアにてmRNA array も施行。ミクログリアの機能に影響すると考えられる遺伝子の候補を、いくつか得ることができた。 また、miRNA124,miR145遺伝子発現後のミクログリア培養上清を回収し、それらをNSC-34 細胞(運動神経細胞株)に投与することにより、神経細胞への保護効果を検証。酸化ストレス下の条件で、神経細胞保護効果を示すことも確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、予定通り、病期別 ALS マウス脊髄ミクログリアへの Molecular ZIP code による標的化の検討を行う。ALSモデルマウス(SOD1tg(G93A))を発症前、早期、中期、晩期の4期に分け、FITCラベルしたM1ペプチドを髄腔内投与する。M1ペプチドを髄注したSOD1-tgの脊髄組織より、脊髄標本を作製し、M1(CD86)、M2(CD206)陽性ミクログリアを免疫染色で同定し、M1ペプチドの標的化の精度と各病期でのM1/M2ミクログリアの割合を検証する。また、投与量を数種類設定し、標識できる最適の容量を決定する。今までに同定済みのアストロサイト標識ペプチドや後根神経節ニューロン標識ペプチドを陰性コントロールとして用いる。また、そこまでの評価を終えれば、H31年度から次年度へ向けて、その結果を踏まえて、Molecular ZIP code 標識遺伝子輸送によるALSマウスへの治療検討 を行う予定である。まずは、発症早期からの予防的投与を検討する。投与回数について、週1回のみから2-3回投与の群に分け、効果判定(行動実験(運動機能検査(Rota-Rod test、grip strength test、Wirehang testなど)、生存曲線)を行う。エンドステージに至ったマウスを用いて、脊髄組織内のM2ミクログリアの細胞割合の検証、非治療群との比較検討、残存神経細胞数の検討、遺伝子解析による炎症関連遺伝子の発現抑制の有無など総合的に治療効果を判定する。また、発症前からの予防投与で有効性が示された場合は、治療実験として、運動機能低下などの神経症状が発症した後の発症早期での投与を試み、症状の回復効果が認められるかを検討する。
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Research Products
(14 results)