2018 Fiscal Year Research-status Report
高分子抗プリオン化合物の作用機序解明ー生体内脂質との関係性を探るー
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18K07518
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西澤 桂子 東北大学, 医学系研究科, 助手 (10431503)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プリオン / セルロース誘導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
セルロースを化学処理して製造される水溶性多糖類であるセルロース誘導体は、食品・医薬品・化粧品・建築・土木などさまざまな産業分野において、保水剤や保形剤、増粘剤等として広く利用されている。申請者らのグループは、これらセルロース誘導体が長期間に渡りプリオン病の発病を抑制することを発見したが、セルロース誘導体がプリオン病の発病を防ぐしくみはまだ明らかになっていない。本研究では、セルロース誘導体と生体内に存在する脂質膜との相互作用に着目し、セルロース誘導体の作用機序に関わる因子を探ることを目標としている。 補助事業期間初年度は、解析ツールのベースとなるセルロース誘導体を組み込んだ脂質複合体の調製プロトコールを最適化した。続いて、セルロース誘導体がこれらの脂質誘導体の物理化学的特性に与える影響を調査し、セルロース誘導体を組み込んだ脂質複合体は、セルロース誘導体を含まない脂質複合体に比べて分散安定性に優れること、セルロース誘導体はフォスファチジルコリンとコレステロールから成る脂質複合体のゼータ電位に影響を与えないが、ポリエチレングリコール修飾した脂質複合体においては、セルロース誘導体が脂質複合体のゼータ電位を負にすることを報告した。 さらに、蛍光修飾した脂質複合体を用い、セルロース誘導体を組み込んだ脂質複合体と神経芽腫細胞やミクログリア細胞との相互作用を解析した。これらの解析より、セルロース誘導体は、脂質複合体と神経芽腫細胞との相互作用を増強する一方で、脂質複合体とミクログリア細胞との相互作用を抑制することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画した内容についてほぼ予定どおり実施し、成果の一部を学術論文に発表した。 計画当初の想定と異なる知見も得られているが、今後検索すべきターゲットを検討するための重要な情報と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、予定していたとおりにプリオン感染細胞においてセルロース誘導体を組み込んだ脂質複合体の挙動解析を進め、セルロース誘導体が作用する因子の探索につなげる。当初計画では、主たるターゲットとして細胞内の膜構造物を想定していたが、本年度得られたデータを元に、解析対象を再検討、最適化しているところである。
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