2018 Fiscal Year Research-status Report
遺伝性脳小血管病変異TREX1の細胞内局在異常による毒性機能獲得メカニズムの解明
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18K07522
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
加藤 泰介 新潟大学, 脳研究所, 特任准教授 (30598496)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | TREX1 / RVCL / 脳小血管病 / DNA damage |
Outline of Annual Research Achievements |
RVCLは、脳・網膜の小血管を主に侵す優性遺伝性の脳小血管病であり、最終的には死に至る疾患であり治療法はない。本症の原因遺伝子はエキソヌクレアーゼの一つであるTREX1である。TREX1はRVCLの他にAGS、FCLの原因遺伝子、さらにSLEの感受性遺伝子としても知られている。AGS・SLE・FCLは自己免疫が関与する類縁疾患であるが、RVCLはこれらの疾患とは異なる病態を呈する。何故同一の遺伝子内の変異により、異なるスペクトラムのRVCLが発症するのかは分かっていない。申請者はRVCL変異TREX1特異的にDNA損傷応答シグナルが亢進することを見出しており、これがRVCL特異的な病態メカニズムに関与すると仮説を立て研究をスタートした。 本年度は、次の点を明らかとした。①RVCL変異TREX1は、複数あるDNA損傷形式の中でも最も悪性度の高い2本差DNA損傷を引き起こす。②RVCL変異TREX1の発現は不死化細胞では細胞死を誘発するが、正常細胞では不可逆的な増殖停止を誘導する。RVCL変異TREX1の発現は内在性野生型TREX1タンパク質の発現を低下させるが、局在は変化させないこと。④RVCL変異TREX1のDNA損傷には核局在と、エキソヌクレアーゼが必要であること。また、これらの新規に知見に加えて、申請者はRVCLモデル生物としてゲノム編集を用いて内在性Trex1遺伝子にRVCL類似のフレームシフト変異を導入したモデルマウスとRVCL変異TREX1過剰発現ハエモデルを作製した。 次年度以降は正常細胞安定発現細胞株を用いて、RVCL変異TREX1が細胞老化・SASPといった老化・炎症に関わる細胞機能変化を誘導するか、生体内においても同様のDNA損傷、細胞老化・SASPを誘導するかに関して集中的に研究を推進していく予定である。本研究は非常に順調にマイルストンを達成している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に予定していた正常細胞を用いたRVCL変異TREX1タンパク質発現の影響を観察する実験系を樹立した。この系を用いて正常細胞下では細胞死ではなく細胞増殖停止を誘導するという重要な知見を得た。これは、正常細胞では細胞老化やSASPといったRVCLの病態に矛盾しない細胞形質変化を誘導する可能性が高く、次のステップとして非常に大きな発見である。また、生体での検討を行うための変異導入マウス・ハエモデルを樹立し、開始できる段階にある。以上のことから、当初のマイルストンを大きな問題なく順調に達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、RVCL変異タンパク質の発現によって正常細胞で細胞老化と炎症因子を無秩序の分泌する細胞形質: SASPが誘導されるかに関して研究を推進していく。 また、モデル動物を用いて、生体への作用に関しても新たな解析を開始する。
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Causes of Carryover |
次年度にRVCL変異TREX1タンパク質の長期的発現の効果を網羅的なRNA seqを用いた遺伝子発現プロファイリングによって解析する予定である。また、この変化をTREX1ノックダウン・自然老化・放射線照射細胞などのプロファイリングと比較する。この費用と消耗品の費用を次年度に計上するため、本年度は消耗品の計上を抑え次年度使用計画としたため。
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