2018 Fiscal Year Research-status Report
新規パーキンソン病原因遺伝子VPS13Cの病態評価と病的意義の探索
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18K07536
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
吉野 浩代 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80338417)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | VPS13C遺伝子 / パーキンソン病 / risk variant / iPS細胞由来神経細胞 / ミトコンドリア機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
常染色体劣性遺伝性パーキンソン病の原因遺伝子であるVPS13C遺伝子について、遺伝子変異の表現型への影響、及び危険因子としての疾患発症への関与の探索を目的として研究を進めた。 既に複合ヘテロ接合体変異が同定された2症例の他、ホモ接合体変異を持つ1症例が新たに検出された。1症例は既に死亡しているため、2症例についてiPS細胞由来の神経細胞における病態機能解析を目的に、iPS細胞の樹立を目指した。それぞれの患者の末梢血から分離された単核球に、ウイルスベクターを用いてプラスミドを導入し、フィーダー細胞への播種・培養にてiPS細胞を樹立した。これを低酸素培養により神経幹細胞を分化誘導し、更に神経幹細胞の細胞塊である一次ニューロスフェアからtyrosine hydoroxylase陽性のドパミン作動性神経に分化誘導される事が確認された。現在、実際の解析に用いる分化状態が良好な細胞の選別を行っている。 危険因子としての関与の探索では、日本人パーキンソン病患者群445人、日本人健常者群126人について、次世代シーケンサーを用いたIon PGM法によりVPS13Cの変異解析を行い、多数のvariantが検出された。この内アレル頻度が1%以下のrare variantを持つ人の割合を両群で比較した結果、患者群でその割合が有意に高く(オッズ比 1.88、p=0.00490)、VPS13Cは日本人において、パーキンソン病の危険因子としての疾患感受性遺伝子である可能性が示唆された。患者群でアレル頻度が高いvariantや患者群に特異的なvariantも認められ、これらは疾患発症により大きく関与する病的意義を持つ重要なvariantであると推測している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はVPS13C変異陽性患者由来のiPS細胞の樹立と、VPS13C variantの関連解析を目的とした。 既に患者由来のiPS細胞を樹立し、ドパミン作動性神経細胞へ分化誘導された事が確認されている。現在、病態機能解析に適した分化状態の良好な神経細胞の選別を行っている。、 関連解析については、疾患群と比較する健常者のDNAサンプルの収集から始め、200人以上の健常者サンプルが得られた。152人についてはVPS13Cの変異解析が終了し、rare variantを持つ頻度が疾患群で有意に高く、VPS13Cが疾患感受性遺伝子である可能性が示唆され、VPS13Cが孤発性パーキンソン病の相対的寄与因子としての可能性を裏付ける結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
患者由来iPS細胞から作製したドパミン作動性神経細胞において、VPS13C蛋白の発現や細胞局在、ミトコンドリア機能の解析等の分子生物学的検討の他、先行論文の剖検脳で確認されたレビー小体やα-シヌクレインの蓄積の有無を、細胞組織・形態学的検討にて探索する。 関連解析については、引き続き健常者サンプルの収集を行うと共に、患者群、健常者群ともに解析数を増やす。また、所有するDNA Bankに新たに登録される患者ばかりでなく、既に登録されている患者の内、原因遺伝子が同定されていない家族性パーキンソン病や、遺伝的要因の関与が大きいと推測される若年発症例については、積極的に解析を進める。
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Causes of Carryover |
遺伝子解析装置(シーケンサー)の老朽化による故障の恐れがあり、新機種への変更や外部委託解析を検討しており、遺伝子解析試薬の購入を一時控えた事で未使用額が発生した。次年度は新機種による解析継続を決定したため、引き続き試薬購入を予定している。
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