2018 Fiscal Year Research-status Report
A comparative analysis of HAM/TSP using novel animal model and patients samples for understanding pathogenesis and identifying potential targets for future therapy.
Project/Area Number |
18K07541
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
齊藤 峰輝 川崎医科大学, 医学部, 教授 (40398285)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | HAM/TSP / HTLV-1 / 動物モデル / T細胞受容体 / 自己抗原特異的T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(Human T-cell leukemia virus type 1:HTLV-1)関連脊髄症(HTLV-1 associated myelopathy:HAM)は、HTLV-1感染者の一部に発症する臓器特異的自己免疫疾患類似の病態を示す慢性炎症性疾患であるが、末梢血中に多種の自己抗体が高頻度に検出され、自己免疫疾患を含む他の炎症性疾患の合併例も多いため、従来よりHTLV-1感染CD4陽性Tリンパ球の機能的変化が宿主免疫系の異常をきたし、発症の原因となる可能性が指摘されている。本研究では、先行研究で作製したHAM類似の下肢対麻痺を自然発症する、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(myelin oligodendrocyte glycoprotein:MOG)特異的CD4陽性T細胞にHTLV-1の転写制御因子TaxまたはHBZを発現するTgマウスと患者検体を材料に、「HAMはHTLV-1の転写制御因子が自己抗原特異的T細胞の免疫寛容を破綻させ、慢性炎症を惹起することで発症する」という仮説を検証する。本年度は、以下の成果を得た。 ① テトラサイクリン遺伝子発現調節システムを用いてヒトCD4陽性T細胞にTaxまたはHBZを発現誘導し、多くの新規標的遺伝子を網羅的に同定した。特に、HBZが多種多様なnon-coding RNAを強力に発現誘導することをはじめて明らかにした。 ② 同定した標的遺伝子の一部について、HAM患者の臨床検体を用いて発現動態を解析し、患者生体内で病態に伴って変動する多くの細胞性因子を見出した。 ③ 血清中の免疫複合体をProtein G 固定化磁気ビーズで捕集後、還元/アルキル化とトリプシン処理した消化物をナノLC-MSシステムにより分析してデータベース検索することで、自己抗原候補を同定する実験系の構築を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テトラサイクリン応答プロモーターの下流に全長のTaxまたはHBZ遺伝子を組み込んだコンストラクトをCD4陽性T細胞株であるJurkat Tet-ON細胞に導入し、TaxまたはHBZの発現誘導前後で変動する遺伝子群をマイクロアレイで網羅的に解析した。その結果、HAM発症への関与が報告されているCXCL10を含め、多数のTax標的遺伝子の強力な発現誘導を確認できた。興味深いことに、この研究で新たに見出した未報告のTax標的遺伝子の中には、HAMの臨床病態の変化に伴って変動する細胞性因子が多数含まれており、その一部はHAM類似の下肢対麻痺を自然発症するTgマウスにおいて血中濃度が上昇していた。また、HBZにより強力に発現誘導される標的遺伝子として、多種多様なnon-coding RNAを同定した。これら標的遺伝子は、HAMの新規治療標的となりうる可能性があるため、HTLV-1感染細胞株や患者検体を用いた機能解析を進めていく予定である。一方、血清中の免疫複合体をProtein G 固定化磁気ビーズで捕集後、還元/アルキル化とトリプシン処理した消化物を作製する実験系を構築した。今後は、ナノLC-MSシステムにより分析してデータベース検索することで、実際に自己抗原候補を同定することが可能かどうか検証する予定である。引き続き研究を遂行することで当初の目的を達成できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きHTLV-1感染細胞株や患者検体を用いて、同定したTaxまたはHBZの新規標的遺伝子について、その病因的意義の検証を行う。 HAM特異的自己抗体を同定するための実験系構築を進め、HAM病態マウスモデルおよび感染者の血清を用いて、未発症マウス群および無症候性HTLV-1キャリアー(Healthy Carrier: HC)群では検出されず、発症マウス群およびHAM群で高頻度に検出される自己抗原の同定を試みる。さらに、HAM群およびHC群で同定した自己抗体の有無と検出頻度を比較解析して、疾患バイオマーカーとしての意義を検証する。 HAM発症におけるTCR特異性の意義を明らかにするため、次世代シーケンサーによるHAM患者CD4陽性T細胞の多様性解析(レパトア解析)を行い、同定した自己抗原でT細胞を刺激した際に増殖してくるレパトアと比較する。 下肢麻痺を発症したHAMモデルマウスから病態関連T細胞候補と考えられるサブセットをセルソーターにより分離採取して、培養液中でMOGペプチドによる再刺激を行った後に野生型(C57BL6)マウスへ細胞移入する。細胞移入したマウスにMOGペプチド免疫によって脊髄炎を誘導し、次世代シーケンサーによるCD4陽性T細胞のレパトア解析を行う。 マウスにおいて発症を増強する細胞群が同定できたら、ヒトにおける相同サブセットが実際のHAM患者およびHCにおいてどのような動態を示すか、臨床経過や病勢との関連はどうかについて解析する。さらに、各種薬剤、HTLV-1蛋白や細胞表面マーカーに対する抗体、核酸等による病態関連T細胞群制御の可能性についても検討する。 以上、一連の解析を通して本研究の目的であるHAM発症作業仮説の検証と、HAMの新規診断法・治療法開発のための新規創薬シーズ・バイオマーカーの発見、将来の臨床応用に向けた研究基盤の構築を目指す。
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Research Products
(3 results)