2019 Fiscal Year Research-status Report
A comparative analysis of HAM/TSP using novel animal model and patients samples for understanding pathogenesis and identifying potential targets for future therapy.
Project/Area Number |
18K07541
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
齊藤 峰輝 川崎医科大学, 医学部, 教授 (40398285)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | HAM/TSP / HTLV-1 / 動物モデル / T細胞受容体 / 自己抗原特異的T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)関連脊髄症(HTLV-1 associated myelopathy:HAM)は、HTLV-1感染者のごく一部に発症する臓器特異的自己免疫疾患類似の病態を示す慢性炎症性疾患である。約40%の患者が経過中に歩行不能となり生活の質が著しく障害される深刻な疾患であるが、その発症予防法・治療法は未だ確立されていない。本研究では、HAMの新規疾患モデル動物を作成し患者検体と詳細な比較解析を行うことにより、HAMの病態形成機序に対する自己免疫反応の病因的意義を解明し、画期的診断法・治療法開発のための新規創薬シーズ・バイオマーカーの発見と将来の臨床応用に向けた研究基盤の構築を目指す。これまでに以下の成果を得た。 ① テトラサイクリン遺伝子発現調節システムを用いてヒトCD4陽性T細胞にHTLV-1の転写制御因子TaxまたはHBZを発現誘導し、多くの新規標的遺伝子を網羅的に同定した。 ② 中枢神経系の組織抗原であるミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)に特異的なCD4陽性T細胞にTaxまたはHBZを発現するトランスジェニックマウスを独自に作成し、約30%の個体に7~11週齢でHAM類似の下肢対麻痺を自然発症することを見出した(新規HAMマウスの確立)。 ③ この「HAMマウス」と「HAM患者検体」を材料に、TaxまたはHBZの標的遺伝子群の発現について詳細な比較解析を行い、HAM患者で報告されているTh1様のT細胞機能異常がHAMマウスの病態形成においても重要であることを示唆する知見を得た。 ④ 血清中の免疫複合体をProtein G 固定化磁気ビーズで捕集後、還元/アルキル化とトリプシン処理した消化物をナノLC-MSシステムにより分析してデータベース検索することで、HAMの病態を反映する自己抗体の対応抗原候補を同定する実験系の構築を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テトラサイクリン応答プロモーターの下流に全長のTaxまたはHBZ遺伝子を組み込んだコンストラクトをCD4陽性T細胞株であるJurkat Tet-ON細胞に導入し、TaxまたはHBZの発現誘導前後で変動する遺伝子群をマイクロアレイで網羅的に解析した結果、HAM発症への関与が報告されているCXCL10や多種多様なnon-coding RNAを含む、多数の標的遺伝子群を同定した。一方、7~11週齢でHAM類似の下肢対麻痺を自然発症する新規HAMマウスを確立した。さらに、ストックされた検体(リンパ球)を用いてHAM患者群および無症候性HTLV-1キャリア(以下「キャリア」とする)群でこれら標的遺伝子群の発現量を比較解析し、患者情報およびHAMマウスのデータと対比することにより、HAMの臨床病態の変化に伴って変動する複数の新規バイオマーカー候補を同定し、その一部はHAMマウスにおいても血中濃度が上昇していることを確認した。以上のことから、研究計画はおおむね順調に進展していると判断している。今後は、HAMの病態特異的自己抗体の探索と次世代シーケンサーによるCD4陽性T細胞の多様性解析(レパトア解析)を行い、HAM発症におけるT細胞受容体(TCR)特異性の意義と同定した自己抗原との関連を明らかにしていく予定である。引き続き研究を遂行することで当初の目的を達成できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きHTLV-1感染細胞株や患者検体を用いて、同定したTaxまたはHBZの新規標的遺伝子について、その病因的意義の検証を行う。HAM病態マウスモデルおよび感染者の血清を用いて、未発症マウス群およびキャリア群では検出されず、発症マウス群およびHAM群で高頻度に検出される自己抗体と、その対応抗原の同定を試みる。さらに、HAM群およびキャリア群で同定した自己抗体の有無と検出頻度を比較解析し、疾患バイオマーカーとしての意義を検証する。HAM発症におけるTCR特異性の意義を明らかにするため、次世代シーケンサーによるHAM患者CD4陽性T細胞のレパトア解析を行い、同定した自己抗原でT細胞を刺激した際に増殖してくるレパトアと比較する。下肢麻痺を発症したHAMマウスから病態関連T細胞候補と考えられるサブセットをセルソーターにより分離採取して、培養液中でMOGペプチドによる再刺激を行った後に野生型マウスへ細胞移入する。細胞移入したマウスにMOGペプチド免疫によって脊髄炎を誘導し、次世代シーケンサーによるCD4陽性T細胞のレパトア解析を行う。マウスにおいて発症を増強する細胞群が同定できたら、ヒトにおける相同サブセットが実際のHAM患者およびキャリアにおいてどのような動態を示すか、臨床経過や病勢との関連はどうかについて解析する。さらに、各種薬剤、HTLV-1蛋白や細胞表面マーカーに対する抗体、核酸等による病態関連T細胞群制御の可能性についても検討する。 以上の解析を通じて、本研究の目的である「HAMはHTLV-1の転写制御因子が自己抗原特異的T細胞の免疫寛容を破綻させ、慢性炎症を惹起することで発症する」という作業仮説の検証と、HAMの新規診断法・治療法開発のための新規創薬シーズ・バイオマーカーの発見、将来の臨床応用に向けた研究基盤の構築を目指す。
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Research Products
(6 results)