2019 Fiscal Year Research-status Report
光遺伝学・ゲノム編集を駆使したセロトニン神経系の情動制御機構解明
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18K07545
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大村 優 北海道大学, 医学研究院, 講師 (80597659)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 5-HT / CRISPR/Cas9 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31年度以降の研究目的は、同定した不安、抑うつ、衝動性を制御するセロトニン神経回路について、関連する5-HT受容体のサブタイプを特定することであった。前年度までの研究で、正中縫線核から腹側海馬に投射するセロトニン神経の活動増加によってマウスの不安様行動が増加することを見出している。関連する5-HT受容体を特定するために、5-HT2C受容体欠損マウスを用いたところ、正中縫線核のセロトニン神経活動増加による不安惹起作用が5-HT2C受容体欠損マウスでは消失していることが示された。さらに5-HT2C受容体拮抗薬を腹側海馬に局所投与した際にも同様の消失が観察されたことから、正中縫線核からのセロトニン神経投射が腹側海馬で5-HT2C受容体を刺激することで不安様行動が増加するものと考えられる。また、前年度までの成果として、背側縫線核から視床下核に投射するセロトニン神経の活動増加によってマウスの衝動的行動が減少することを見出してきた。関連する5-HT受容体サブタイプをゲノム編集によって特定する前に、まず、各種5-HT受容体拮抗薬を視床下核に投与することでおおよその見通しを得ることを試みた。しかし、どの拮抗薬を用いても、背側縫線核刺激による衝動性抑制作用は減弱しなかった。近年の研究によれば、背側縫線核のセロトニン神経はグルタミン酸を共放出することが示されていることから、グルタミン酸の関与が推測される。そこで方針を変え、ゲノム編集によってセロトニン合成酵素であるTPH2の遺伝子もしくは小胞性グルタミン酸トランスポーターVGLUT3の遺伝子をノックアウトし、セロトニンとグルタミン酸のどちらがこれまで観察してきた行動に関与するのかを探ることとした。その準備として免疫染色によるタンパク発現の欠損確認を行い、TPH2に関してはゲノム編集によってTPH2発現が減少していることを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不安の神経回路については予定通りに関連5-HT受容体サブタイプを特定できた。衝動性、うつの神経回路については共放出されるグルタミン酸の関与が示唆されたため、方針を転換し、まずセロトニンかグルタミン酸か、を決定することとした。そのための準備は順調に進んでいることから、おおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
セロトニン神経選択的に小胞性グルタミン酸トランスポーターVGLUT3の遺伝子をノックアウトし、セロトニン神経から共放出されるグルタミン酸が衝動性、うつ様行動に与える影響を明らかにする。もしセロトニンではなくグルタミン酸が重要であると分かれば、グルタミン酸受容体の種類の特定を行う。セロトニンが重要であれば、当初の計画に戻り、セロトニン受容体サブタイプの特定を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で参加を予定していた学会が中止となったため。
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Research Products
(6 results)