2018 Fiscal Year Research-status Report
妊娠母の向精神薬内服が新生児のQTc延長症候群を発症させるか検証する
Project/Area Number |
18K07552
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
大槻 正孝 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (10596894)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石黒 浩毅 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (20375489)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 薬剤性QTc延長症候群 / 周産期メンタルヘルス / 薬剤胎盤移行 / 新生児 |
Outline of Annual Research Achievements |
QTc延長症候群(LQTc)は心臓に器質的疾患を持たなくも心電図におけるQTc時間の延長を認める病態であり、薬剤性が2次性LQTcとして知られている。向精神薬の多数がQTc時間を延長する作用を持つことを示唆しており、母親が妊娠中に向精神薬内服を継続していた場合には胎児暴露症候群の1つとして新生児のQTc時間について慎重な評価を行うことが必要である。胎盤移行した向精神薬が新生児体内に入り児の排出機能が十分に稼働するまでの出産48時間以内、および排泄が進む産後5日の2時点にて測定を行うことでQTc時間に影響を与える薬剤を特定することが可能であり、胎内暴露症候群について心電図検査を行うことの妥当性を明らかに出来る。 当院は県内唯一の産科・精神科および新生児救急部を併せ持つ医療機関であるため、精神科疾患を罹患する母親の精神科と身体科的健康管理を担っている。妊娠と薬について医療情報の増加とともに医師・患者とも高度な医療を期待するようになり、向精神薬の服薬継続について児の安全を担保する医療情報の蓄積は喫緊の課題である。 新生児LQTcのハイリスクとなる薬剤を同定することが本研究の最終目的となるが、まずは向精神薬の内服が新生児LQTcを引き起こした症例をできるだけ多くスクリーニングする必要がある。まずは対象薬剤を無作為に広範囲とすると観察されたLQTcが偶然の結果であるのか否かの検証が困難となると考え、当該年度においては一般精神科医療においてよりLQTcリスクが高いことが示唆されている抗精神病薬を対象として被検者の抽出と心電図解析を行ってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最近数年間の当院出産実績から、抗精神病薬あるいは抗うつ薬を内服する母親は年間25-30名と推定していた。そこで抗うつ薬および抗精神病薬を内服する妊婦から年間で20名を被検者とする予定であったが、昨年度に関しては当該薬剤の内服を継続した妊婦で研究参加に同意を得られた被検者は10名にとどまったため進捗状況はやや遅れていると判断した。対象者の選択ならびに研究に関する説明と同意取得を精神科主治医ではなく、本研究の研究代表者と研究分担者だけで行ってきたため、産科病棟に入院した出産直前の母親への説明となりその場で同意を得にくかった可能性もある。 予期せぬ事故として購入1年強のホルター心電図2台がともに故障をした。そのためデータ取得が出来なかった被検者も4名いる。
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Strategy for Future Research Activity |
精神疾患等を罹患する女性が妊娠に至り、向精神薬の内服を継続しながら当院にて出産する妊産婦については、担当精神科医が当院医師であるか否かに関わらず研究に参加をして頂くため、当院産科医師および助産師からの協力を得て薬剤性QTc延長症候群に関する情報提供を行うことでより多くの被検者数の参加を期待することができる。初年度はより薬剤性QTc延長症候群のリスクが高いことが推測された抗精神病薬を中心に被検者収集を図ったため、他の向精神薬についても対象を増やして解析をする。さらに他施設を含めて向精神薬を内服していない母親から出生した新生児のQTc時間に関する情報(本研究における健常対照者のQTc時間)がほとんどないことが判明したため、対照群となる被検者の集積も同時に行うことにより健常対照群間比較検証を行うことが出来る。
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Causes of Carryover |
収集した被検者数が予測された人数よりも少なかったことから、解析に必要な消耗品ならびに解析補助に当たる研究補助員の勤務実績が少なくなった。次年度には昨年度に比べて被検者収集数の増加が期待できるため、次年度使用額をこれに必要な消耗品ならびに人件費に充てることを考えている。
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