2019 Fiscal Year Research-status Report
幼少期ストレスとmiRNAに着目した気分障害の診断と治療に直結する病態解明研究
Project/Area Number |
18K07556
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
朴 秀賢 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (60455665)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菱本 明豊 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (50529526) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 幼少期ストレス / miRNA / 気分障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
幼少期ストレスが気分障害の発症脆弱性や重症化・難治化を引き起こすことが精神科臨床では良く知られており、幼少期ストレスを受けた気分障害患者の治療に難渋することが多い。そこで、本研究は、幼少期ストレスが気分障害の発症脆弱性や重症化・難治可を引き起こすメカニズムを、miRNAと成体海馬神経細胞新生(気分障害の病態に深く関わっている現象)の観点から解明し、治療法やバイオマーカーの開発に活かすことを目的としている。 代表者は幼少期ストレスで海馬と血清において発現量が変化するmiRNAを網羅的解析により既に多数同定している。それら多数のmiRNAの中で、海馬と血清の双方において増加しているmiRNAを1つ同定し、 実際に幼少期ストレスの影響を受ける気分障害の患者において、そのmiRNAの発現が増加していることを見出した。また、このmiRNAは神経幹細胞の増殖の調整に関与していることが、他グループから最近報告された。そのことを踏まえて、このmiRNAのさらなる機能解析を現在行っているところである。また、海馬において発現量が有意に変化したmiRNAのpathway解析を行い、幼少期ストレスが及ぼす生物学的影響に関与する興味深いシグナル伝達経路を複数見出した。これらの経路の多くは神経幹細胞の増殖や生存に関与するものであり、改めて、幼少期ストレスの生物学的影響における成体海馬神経細胞新生の重要性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
網羅的解析を行い、見出したmiRNAの1つが気分障害の患者でも同様に変化していることを見出している。更に、pathway解析も行い、幼少期ストレスの生物学的影響に関与する複数のシグナル伝達経路も見出しており、順調に進捗していた。しかし、昨年11月に神戸大学精神科から熊本大学精神科に異動し、熊本大学精神科では研究室が未整備であったため、異動後は研究室の整備を行う必要があり、研究を一旦停止せざるを得なかった。そのため、予定よりも進捗状況がやや遅れている状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究室の整備が完了して実験を再開可能となったので、今後はpathway解析で見出したシグナル伝達経路が実際に幼少期ストレスの生物学的影響に関与しているのかどうかを、マウス・ラットを用いた基礎的研究により検討していく。 また、血清で有意に変化した複数のmiRNAの組み合わせが幼少期ストレス・気分障害のバイオマーカーになる可能性が期待され、この可能性についても患者由来の血清を用いて検討していく。
|