2019 Fiscal Year Research-status Report
PTSDの発症機構に即した予防法と神経活動操作による新規治療法の開発
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18K07562
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
淵上 学 広島大学, 病院(医), 講師 (40403571)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | PTSDの発症機序 / PTSDの予防法 / PTSDの異常な神経回路 / PTSDの新規治療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の病態は不明な点も多く、現行の標準的な治療を行っても症状が遷延する患者も多く存在する。このため、本研究では疾患モデルラットを用いて① PTSD の詳細な脳内発症機序の解明とこれを基盤とした新規予防法の開発、② 治療抵抗性PTSD の主要症状(恐怖記憶の消去障害)の神経回路の解明とその神経活動操作による新規治療法の開発、を目的としている。 ①に関して、平成30年度にPTSD の病態形成過程において、心的外傷後のグルココルチコイド受容体系の核内への移行が起点となり、アポトーシス抑制因子であるBcl-2遺伝子のプロモーター領域へのグルココルチコイド受容体結合が亢進し、Bcl-2 mRNAの発現が低下することを見出した。平成31年度には、その結果として脳内でのアポトーシス増加を見出した。また、同受容体の阻害薬を用いて、心的外傷後の恐怖記憶の消去障害とアポトーシスが予防されることを確認した。 ②に関して、平成30年度に通常飼育ラットにおいて、内側前頭前野皮質の中の下辺縁皮質領域の神経活動の亢進が恐怖記憶の消去を促進させることを見出したが、恐怖記憶の消去障害を持つPTSDモデルラットでは、下辺縁皮質の賦活で恐怖記憶の消去の促進を認めたものの、その促進の程度は通常飼育ラットに比して有意に小さかった。平成31年度には、その機序として、下辺縁皮質領域のアポトーシスの増加と化学遺伝的手法による賦活への反応性が低いことを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「PTSD の脳内発症機序の解明とこれを基盤とした新規予防法の開発」においては、脳内発症機序の一端を見出し、薬剤による分子機序と形態変化、行動面での予防効果を明らかにした。「治療抵抗性PTSD の主要症状(恐怖記憶の消去障害)の神経回路の解明とその神経活動操作による新規治療法の開発」においては、恐怖記憶の消去障害に関わる異常な神経回路を部位のみならず神経活動からも明らかにし、同異常の修復による行動面での改善を見出しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
「PTSD の脳内発症機序の解明とこれを基盤とした新規予防法の開発」においては、グルココルチコイド受容体阻害薬によるPTSD発症の予防に最も適した時相を検討すると共に論文作成を行う。「治療抵抗性PTSD の主要症状(恐怖記憶の消去障害)の神経回路の解明とその神経活動操作による新規治療法の開発」においては、PTSDモデルラットにおける下辺縁皮質領域の神経興奮性の低下の機序検討と共に、他脳部位の神経活動への影響を検討する。
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Causes of Carryover |
当該年度に予定していた生化学実験や電気生理実験よりも、行動薬理実験を優先したため。計画していた分子生物学的実験は翌年度に施行し、これに繰越金を使用する。また、学会や論文での成果発表を予定しており、旅費と論文校正費にも使用する。
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