2018 Fiscal Year Research-status Report
一細胞遺伝子発現解析の実現による統合失調症病態メカニズム解明と創薬への応用
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18K07578
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
前川 素子 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (50435731)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 1細胞 / シングル核 / 遺伝子発現解析 / 統合失調症 / オリゴデンドロサイト / GABAニューロン |
Outline of Annual Research Achievements |
<研究目的>マウス脳組織から採取した細胞を1細胞の単位で遺伝子発現解析することにより、細胞種特異的に統合失調症病態メカニズムを考察する。 <平成30年度の研究実績>(1) 今年度は、野生型マウスの脳を用いて予備検討を行った。具体的には、野生型マウスの左心室からPBSを還流後、頭部から大脳皮質を切り出し、ホモジナイザーで組織を懸濁して超遠心機で細胞核を分離した。その後、NeuN抗体を用いて神経細胞核を標識し、フローサイトメーターで神経細胞核と非神経細胞核に分け、細胞膜溶解液分注済の96 well plate に1 wellあたり1核ずつ採取した。採取した細胞核について逆転写を行った。得られた細胞核の細胞種を特定するため、目的の細胞種のマーカー(オリゴデンドロサイトの場合はSox10, GABAニューロンの場合はGad1を使用)で遺伝子発現解析を行い、発現量に基づいて、1細胞核ごとに細胞種を分類した。(2) 統合失調症治療薬の開発を行う目的で、統合失調症の病態形成に関連する可能性のある受容体Xのリガンド候補のスクリーニングを行った。具体的には、化合物ライブラリーに登録されている物質の中から化学構造上脳移行性が高いと考えられる物質を選び、受容体活性化能が高い物質を選別した。 <意義、重要性>近年、シングルセルでの遺伝子発現解析に興味が持たれているが、脳細胞の場合は神経突起が相互に複雑に絡み合っていることなどから、単一細胞への分離が困難であった。本研究では、脳細胞を「細胞核」の状態で分離することにより、より正確に1細胞単位の解析を行うことが可能となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、野生型マウスを用いて、神経細胞核、非神経細胞核の分離に成功した。得られた細胞核について、細胞種を特定するため、目的の細胞種のマーカー(オリゴデンドロサイトの場合はSox10, GABAニューロンの場合はGad1を使用)についての遺伝子発現解析を行い、その発現量に基づいて、1細胞核ごとの細胞種の同定を行った。また、統合失調症に関連する可能性が有る受容体Xについて、化合物ライブラリーに登録されている化合物から化学構造上脳移行姓が高いと考えられるリガンド候補を選択した。これらの候補物質を用いて受容体活性化の評価を行い実際に受容体活性化能を持つ物質(66化合物)を選別した。これらの解析より、3年間の計画の1/3程度が終了した。よって、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、受容体Xのノックアウトマウス(統合失調症様の行動表現型を示すことを明らかにしている)を用いて、シングル核の分離を行い、細胞種ごとに受容体Xに関連するシグナルカスケードを検討する.この解析によって、細胞種ごとに、受容体Xと統合失調症病態メカニズムとの関連を考察する。また、今年度の解析により選別した受容体Xのリガンド候補(66化合物)について、培養細胞に添加して遺伝子発現解析を実施し、受容体Xに関連するシグナルカスケードの変動が起きるか調べる。この評価により、受容体Xの候補リガンドの絞り込みを行う。
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Causes of Carryover |
<理由>来年度は、受容体Xのノックアウトマウスのシングル核解析を実施する予定である。受容体Xのノックアウトマウスの飼育費、解析費用などが当初の予定より高額になる見込みのため、次年度使用額が生じた。 <使用計画>受容体Xのノックアウトマウスの飼育費、解析費用などに使用する予定である。
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