2019 Fiscal Year Research-status Report
概日リズム睡眠覚醒障害の遺伝要因とその発症分子メカニズム
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18K07580
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
肥田 昌子 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部, 客員研究員 (20333354)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 概日リズム / 睡眠 / 時計遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
概日リズム睡眠-覚醒障害は望ましい時間帯に睡眠をとることが困難な疾患であり、複数のサブタイプが存在する。その一つである睡眠-覚醒相前進障害は、睡眠時間帯が著しく前進して適当な時間に寝起きすることができない。家族性睡眠-覚醒相前進障害は生物時計システムの何らかの機能障害によって生じると考えられており、分子遺伝学研究により時計遺伝子CKIδ、CRY2、PER2、PER3のバリアントが発症に関係している複数の家系が既に報告されている。しかしながら、日本人の2家系で調べたところ、これらの報告されているバリアントと同一のものは認められなかった。本研究では、罹患者6人、非罹患者9人の計15人を対象に、睡眠や概日リズムに関連する76遺伝子についてDNA配列解析を行い、罹患者に共通するバリアントを探索した。その結果、ターゲット遺伝子のエクソン上にないものや、信頼性の低いものを除外して、新規のバリアント47種、既知のバリアント1,167種に絞り込んだ。このうち、罹患者のみに共通して見られる既知のバリアントとして、TIMELESSとCRY2のバリアントが1つずつ見つかった。このうち、TIMELESSとCRY2のバリアントについて培養細胞を用いて発光リズムアッセイを行った。TIMELESSの発光リズムは測定に成功し、野生型の周期長の平均は約23時間、変異型の周期長の平均は約24時間になったが、有意差は認められなかった。また、CRY2の発光リズムは波形が潰れてしまい観測できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
家族性睡眠-覚醒相前進障害の罹患者にTIMELESSとCRY2遺伝子のバリアントを検出した。別の睡眠-覚醒相前進障害家系ではCRY2のバリアントが、またそれとは異なる別の睡眠-覚醒相前進障害家系ではTIMELESSのバリアントが報告されている。今回の研究で見つかったTIMELESSとCRY2のバリアントは先行研究で見つかったものとは異なっていた。どのような機能変化をもたらすかどうか発光リズムアッセイでは特定できなかったが、この2遺伝子が睡眠-覚醒相前進障害の発症に寄与している可能性を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
概日リズム睡眠-覚醒障害の別のサブタイプである非24時間睡眠-覚醒リズム障害は、入眠・覚醒時刻が毎日30分から1時間ずつ遅れ続ける、一般集団では非常に稀な疾患である。定まった時刻に寝起きすることができず昼夜の生活が逆転してしまう期間が生じ、社会生活への適応は著しく困難になる。今後は、非24時間睡眠-覚醒リズム障害を対象に睡眠や概日リズムに関連する遺伝子のDNA配列解析を行う。患者群に存在するバリアントを検出し、検出された既知ならびに新規のバリアントと疾患の関連性の検証を進め、非24時間睡眠-覚醒リズム障害の遺伝要因の同定に取り組む。
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Causes of Carryover |
当該年度は、合計15人の被験者を対象に睡眠や概日リズムに関連する76遺伝子についてDNA配列解析を行い、罹患者に共通するバリアントの探索を行った。次年度は、非24時間睡眠-覚醒リズム障害を対象に睡眠や概日リズムに関連する遺伝子のDNA配列解析を行う。患者群に存在するバリアントを検出し、検出された既知ならびに新規のバリアントと疾患の関連性の検証を進め、非24時間睡眠-覚醒リズム障害の遺伝要因の同定に取り組む。
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