2019 Fiscal Year Research-status Report
海馬歯状回のin vivoカルシウムイメージングによるてんかん原性獲得の機序解明
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18K07589
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神出 誠一郎 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30376454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅谷 佑樹 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (00625759)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 歯状回 / 苔状細胞 / てんかん / カルシウムイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31年度(令和1年度)は、平成30年度に確立した苔状細胞選択的カルシウムイメージング手法を用い、覚醒下におけるてんかん発作時の苔状細胞の活動を測定した。当初の予定であった貫通枝刺激のセットアップと並行して、まず最初にてんかん発作を確実に誘発することができるカイニン酸の腹腔内投与を行い、発作時の苔状細胞の活動性変化を確認した。 海馬の直上にマイクロエンドスコープを装着したマウスに30mg/kgのカイニン酸を腹腔内投与し、苔状細胞の活動を60分間測定した。苔状細胞は行動学的なてんかん発作の前から活動性が亢進し、Rearingを伴うClonusを呈した間に活動性はピークを認めた。カイニン酸による急性発作は発作重積のため、ペントバルビタール(50mg/kg)の腹腔内投与によって発作を停止させたところ、細胞の活動も停止した。この結果を受け、31年度は貫通枝刺激の前にカイニン酸発作におけるDesigner Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs(DREADD)による苔状細胞選択的な活動性操作の影響を検討することとした。苔状細胞選択的cre発現マウスの歯状回へのAAV投与により苔状細胞選択的に興奮性DREADDを発現させ、続いてClozapine-N-Oxide(CNO、5mg/kg)の腹腔内投与による苔状細胞の活動性変化を評価した。まず自由行動下にてCNO投与により苔状細胞の活動性が著しく上昇し、DREADDによる苔状細胞選択的な活動性の操作が可能であることが確認された。現在、CNO投与に続いてカイニン酸を投与し、苔状細胞の活動性上昇に伴い、行動学的な発作の潜時と重症度を測定中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に確立した覚醒下in vivoカルシウムイメージングの手法により、苔状細胞にて安定した活動記録を得られている。予定していた貫通枝刺激の前に、明確なてんかん発作時の活動を確認するためカイニン酸投与を行い、てんかん発作時における苔状細胞の活動性上昇について経時的に測定することができた。 この結果に合わせて、令和2年度に予定していたDREADD発現とCNO投与の実験を前倒しして行った。上記の通り、ウイルスを用いて興奮性のDREADDを苔状細胞選択的に発現させ、CNOの投与により、まず自由行動下での苔状細胞選択的活動増加が確認できた。このことはDREADDにより、苔状細胞の活動性操作が可能となったということであり、31年度の本研究の中でも特に大きな進展であるといえる。DREADDによって苔状細胞の活動性を上昇させた上で、カイニン酸投与によるてんかん発作時の表現型の違いを評価しており、令和2年度も継続する。 上記に加え、今後貫通枝刺激によるてんかん発作での苔状細胞の役割を詳細に検討することで、てんかん発作において海馬神経ネットワークの一つとして苔状細胞がいかに作用するかさらに解明が進むと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度~31(令和元)年度にかけてAAVを用いたGCaMP6投与による苔状細胞選択的in vivoカルシウムイメージング手法と、DREADDを用いた苔状細胞選択的な活動性操作について確立した。令和2年度は最終年度として嗅内皮質からの貫通枝刺激による海馬歯状回への興奮性入力に対し、てんかん発作閾値を超える場合、超えない場合の苔状細胞の活動性の違いを比較検討する。また31年度に確立したDREADDの手法を用い、苔状細胞選択的な活動性の操作により、海馬の興奮性がいかに変動するかを経時的に詳細な評価を行う。さらにこれらの結果から、カイニン酸てんかんと貫通枝刺激によるてんかんにおける苔状細胞の経時的な活動性の違いや、その役割について検討する。以上から、てんかん発作における苔状細胞の性質をカルシウムイメージングにより直接観察することで詳細な把握が可能になり、側頭葉てんかんのてんかん原性獲得メカニズム解明の一助となることが期待される。
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Causes of Carryover |
平成31年度(令和元年度)は研究の進行上の理由からDREADD実験を優先して行ったが、想定よりも順調に手法の確立が得られたため、試薬や消耗品等の購入額が当初の予想額よりも少なくなったことから次年度使用額が生じた。しかし、令和2年度に予定するin vivoカルシウムイメージングと並行した貫通枝刺激実験は手技の確立に十分な条件検討を要するため、当初の想定よりも試薬や消耗品等の購入が増える可能性が高い。以上から、上記の次年度使用額については、令和2年度の電気生理学的、分子生物学的消耗品等の費用として使用する計画である。
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