2018 Fiscal Year Research-status Report
記憶・情動障害を主徴とする辺縁系脳炎型橋本脳症の分子免疫病態の解明
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18K07593
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
松永 晶子 福井大学, 学術研究院医学系部門, 特別研究員 (40401971)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 誠 福井県立大学, 看護福祉学部, 教授 (70270551)
三苫 博 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (20453730)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 橋本脳症 / 辺縁系脳炎 / 抗NAE抗体 / 免疫組織染色 / パッチクランプ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
“橋本脳症”は、慢性甲状腺炎(橋本病)に伴う免疫学的異常による精神神経疾患で、ステロイド治療が奏功するが、一部は抵抗性である。我々は、橋本脳症患者血清中の分子診断マーカー(抗NAE抗体)を同定した。最近、橋本脳症が記憶・情動と関連する脳の辺縁系の炎症を引き起こすことを見出し、『辺縁系脳炎型橋本脳症』の新しい疾患概念を提唱した。しかし、その免疫学的病態機序は未解明であるため、本研究では、患者の血清・髄液中の自己抗体による分子免疫学的影響を解析することを目的としている。 <ラット脳海馬組織の免疫染色> 橋本脳症における免疫学的な脳の標的部位および細胞を明らかにするために、抗NAE抗体陽性辺縁系脳炎型橋本脳症の患者血清と市販の抗α-エノラーゼ抗体を用いて、ラット脳海馬スライスで二重免疫蛍光染色を行った。抗α-エノラーゼ抗体は海馬スライス全体に広く反応した。患者血清は、海馬スライスのニューロンではなく、小血管に対し免疫反応を示した。この結果は、橋本脳症の脳病理では小血管炎が報告されていることや、脳血流シンチグラムでは脳血流低下を示すことと関連があることが示唆された。 <ラット海馬組織の生理機能解析> ラット海馬スライスを用いたパッチクランプ法で、抗NAE抗体陽性辺縁系脳炎型橋本脳症患者の脳脊髄液添加による神経伝達障害の解析を行った。患者髄液 4例とコントロール髄液 1例を用いて、海馬CA3-CA1のシナプス伝達を解析した。患者髄液のうち1例で興奮性シナプス後場電(fEPSP)の上昇がみられた。この結果より、患者髄液が海馬シナプス伝達に作用することが示された。fEPSP上昇の機序を解明するための追加実験の検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ラット脳海馬組織の免疫染色は、橋本脳症患者血清中における自己抗体が反応する部位をさらに詳細に検討するために、当初予定のなかった追加実験を要する。従って、今年度中に終了予定であったが、引き続き来年度も異なる抗体を用いた追加実験を行う予定であり、やや遅れているとした。神経培養細胞のプロテオーム解析については、予備実験の段階である。神経生理解析は今年度予定していた解析は終了した。
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Strategy for Future Research Activity |
<ラット脳海馬組織の免疫染色> 抗NAE抗体陽性辺縁系脳炎型橋本脳症患者の血清中における自己抗体が反応した小血管について、部位をさらに詳細に検討する。そのため、当初予定はなかったが、血管内皮細胞に対する抗体等を用いて追加実験を行う。 <ラット海馬神経細胞のプロテオーム変化の解析(DIGE法)> 培養ラット海馬神経細胞プロテオーム変化の解析は、当初の計画通り研究分担者とともに研究を続行する。 <ラット海馬スライスへ患者髄液添加によるシナプス伝達の解析(パッチクランプ法)> 研究分担者の協力を得て解析を行う。追加実験として、fEPSP上昇の機序を解明するための海馬ニューロンへの局所投与による電気刺激誘発性興奮性シナプス後電流や、サイトカインによるシナプス伝達の変化を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、この研究は3年間で完遂する予定であり、当初の計画通りさらに2年間研究を続ける予定である。 使用計画については、消耗品費として、ウシ血清、神経細胞、各種抗体、プラスティック器具など病態研究に必要なものを購入する予定である。また、機器を使用する際の使用費も予定している。その他、研究成果発表のための学会出席や、論文投稿のための英文校正費や投稿費を予定している。実験設備は整っており、設備備品を購入する予定はない。
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