2018 Fiscal Year Research-status Report
Functional analysis of calcium channels related to intracellular stress signal transduction in bipolar disorder
Project/Area Number |
18K07594
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
上村 拓治 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (60377497)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 双極性障害 / 細胞内ストレスシグナル伝達 / カルシウムチャネル / CACNA1C / TRPC3 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、双極性障害の発症機序を解明するために、CACNA1CとTRPC3の相互作用におけるSNP rs1006737の役割を同定し、ストレスシグナル伝達破綻に関わるカルシウムチャネルの役割を詳細に検討することを目的とする。ヒトアストロサイトーマU-87MG細胞を用いた新規の研究論文はまだ散見される。しかしながら、中枢神経系由来の細胞ではあるが、樹立時の細胞とは違うプロファイリングを持っていることが報告された。当初、U-87MG細胞を用いる予定であったが、STR解析が実施されており、プロファイリングがなされているヒトグリオーマ細胞株(YKG-1細胞)を用いることとし、本年度は以下の研究を行った。
① YKG-1細胞に、LiCl(0~2 mM)を投与し、0、1、3、7日後に各々の細胞を回収し、CACNA1C、TRPC3、S100BのmRNAの発現をリアルタイムRT-PCR法で定量的に測定した(各群は8サンプルずつ)。CACNA1C mRNAは、LiClの濃度が増えるだけでなく経時的にもその発現量が減少していく傾向を認めた。特にLiClを7日間投与した際には、0.5mM LiClを投与した細胞群と1 mM及び2mM LiClを投与した群において明らかな差を認めた。一方で、1 mMと2 mM LiClを投与した群では差を認めなかった。TRPC3およびS100β mRNAにおいても同様の傾向を認めた。
②RNAiベクターを使ってCACNA1Cの発現が安定にノックダウンしているYKG-1細胞株を作製し、CACNA1C、TRPC3、S100BのmRNAの発現をMGBプローブ法によるリアルタイムRT-PCRで、定量的に各遺伝子のmRNA量を測定した(各群は8サンプルずつ)。その結果、興味深いことに、S100β mRNAの発現量が低下していたが、TRPC3 mRNAの発現量は増えていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
U-87MG細胞からYKG-1細胞へと使用する細胞株の変更はあったが、LiClによる経時的、濃度依存的なCACNA1C、TRPC3、S100βの発現変動を確認することができた。また、RNAiベクターを使ってCACNA1Cの発現が安定にノックダウンしているYKG-1細胞株を樹立することもできた。同細胞株では、S100β mRNAの発現量が低下しているが、TRPC3 mRNAの発現量が増えていた。このことから、CACNA1Cの発現量が、S100βの発現に関与しているだけでなく、TRPC3の発現にも関与しているといった新しい知見を見出すことができた。この結果を確認するためにも、TRPC3の発現が安定にノックダウンしている細胞株を必要としたが、使用する細胞株の変更もあり、TRPC3の発現が安定にノックダウンしているYKG-1細胞株は作製中である。そのため、TRPC3の発現が安定にノックダウンしている細胞株でのCACNA1CおよびS100βの発現量を確認することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年以降の研究計画 1) 速やかに、TRPC3の発現が安定にノックダウンしているYKG-1細胞株を作製し、CACNA1C、S100βの発現を確認する。また、各遺伝子のタンパクレベルでの発言変動、細胞内Ca2+動態を蛍光プローブFura2AMで測定する。なお、気分安定薬であるリチウムはGSK3βを直接的阻害作用を有していることから、結果次第においては、GSK3βの発現変動も確認していく。 2)In silico 解析で予測されたSNP rs1006737のA allele 特異的Nested gene(遺伝子X)を同定するため、①健常者(n = 50)の唾液から、DNA及びRNAを抽出し、抽出したDNAから同SNPのGenotypingを行った後、得られたRNA を用いてallele間におけるCACNA1C及びTRPC3の発現量の変化を検証し、また遺伝子Xの発現を確認する。②5’及び3’RACE 法で、遺伝子Xの全塩基配列を決定する。③ゲノム編集技術を用いて、YKG-1細胞で双極性障害のリスクバリアントであるSNP rs1006737のA allele 細胞株(CACNA1CA/A細胞株)を作製し、遺伝子Xの同定ならびにCACNA1C及びTRPC3 の発現量を検証する。 3)CACNA1C/TRPC3相互作用における遺伝子Xの機能を解析するために、①CACNA1CA/A 細胞株を用いて、リチウム(0~2.0 mM、0, 1, 3, 7日間)投与及びH2O2による酸化ストレス時のCACNA1C、TRPC3、S100βの発現変動、細胞増殖率を測定する。②リチウム(0~2 mM、0, 1, 3, 7日間)投与後、H2O2による酸化ストレス時の細胞内Ca2+動態を蛍光プローブFura2AMで測定する。
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Causes of Carryover |
本年度の研究で、mRNAレベルではあるが、CACNA1Cの発現量がS100βの発現に関与しているだけでなく、TRPC3の発現にも関与しているといった新しい知見を見出すことができた。しかしながら、使用する細胞株の変更もあり、TRPC3の発現が安定にノックダウンしているYKG-1細胞株を作製する必要性がでてきた。本年度の研究結果を多角的に検証するためにも、タンパクレベルや細胞内カルシウム動態の変動だけでなく、TRPC3の発現が安定にノックダウンしているYKG-1細胞株でのCACNA1CおよびS100βの発現量も確認する必要性がある。そのため、次年度へと繰り越して使用額の変更が生じた。また、当初予定しているIn silico 解析で予測されたSNP rs1006737のA allele 特異的Nested gene(遺伝子X)の同定および機能解析も遂行する予定である。
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