2020 Fiscal Year Research-status Report
Functional analysis of calcium channels related to intracellular stress signal transduction in bipolar disorder
Project/Area Number |
18K07594
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
上村 拓治 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (60377497)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 双極性障害 / 細胞内ストレスシグナル伝達 / カルシウムチャネル / CACNA1C / TRPC3 / GSK3β |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、双極性障害の発症機序を解明するために、CACNA1CとTRPC3の相互作用におけるSNP rs1006737の役割を同定し、ストレスシグナル伝達破綻に関わるカルシウムチャネルの役割を詳細に検討することを目的とし、ヒトグリオーマ細胞株(YKG-1細胞)を用いて、以下のことを行った。 ① LiCl(0~2 mM)を、0、1、3、7日間投与し、CACNA1C、TRPC3、GSK3β mRNAの発現をリアルタイムRT-PCRで定量的に測定したところ、LiClの濃度・時間依存的に各mRNA発現量が減少することがわかった。 ② RNAiベクターを使ってCACNA1C、TRPC3、GSK3βの発現が安定にノックダウンしている細胞株を各々樹立化した。リアルタイムRT-PCRで、各細胞株における各遺伝子の発現量を確認し、これらの遺伝子間における相互作用を見出した。 ③ LiCl(0~2 mM)を投与し、0、1、3、7日後に、酸化ストレス(0.6mM H2O2, 18h)を行い、細胞生存率を測定した。1mMおよび2mM LiCl(7日間)群では、LiCl投与なし群に比べて有意な細胞生存率の上昇を認めた。 ④ CRISPR-Cas9を用いて、CACNA1C SNP rs1006737のA/AおよびA/Gへ置換した細胞株の樹立化に成功した。Web上の2種類の解析ソフトを用いて、オフターゲット効果を予測されたDNA配列を同定し、それぞれの解析ソフトでオフターゲット効果が予測されたDNA配列をその可能性が高い順から5個ずつ選択し、当該領域をPCRで増幅後、DNAシーケンシングを行った。CACNA1C SNP rs1006737のA/AおよびA/Gへ置換した細胞株において、オフターゲット効果の可能性が予測されたDNA配列の変異は認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の進捗状況は、 ①CACNA1C、TRPC3、GSK3β mRNAは、LiClの濃度・時間依存的に各mRNAの発現量が減少することがわかった。特にLiClを7日間投与した際、0.5mM LiClを投与した細胞群と1 mM及び2mM LiClを投与した群の間で明らかな差を認めた。一方で、1 mMと2 mM LiClを投与した群では有意な差を認めなかった。H2O2投与(酸化ストレス)時のCACNA1C、TRPC3、GSK3β mRNAの発現量はまだ確認できていない。② mRNAレベルではあるが、TRPC3がノックダウンしている細胞株では、GSK3β、CACNA1Cの発現が低下し、GSK3βがノックダウンしている細胞株では、CACNA1C、TRPC3の発現が低下していた。一方で、CACNA1Cがノックダウンしている細胞株では、TRPC3、GSK3βの発現が上昇しているといった、遺伝子間相互関係を見出すことができた。まだ、タンパクレベルでの評価は行えていない。③ WST-8を用いて、H2O2の投与濃度(0.3~0.9mM)および投与時間(6~24時間)を検討し、至適条件として、0.6mM、18時間投与を見出した。④LiCl(0~2 mM)を投与し、0、1、3、7日後に、酸化ストレス(0.6mM H2O2, 18時間)を行い、細胞生存率を測定したところ、1mMおよび2mM LiCl(7日間)群において、LiCl投与なし群に比べて有意な細胞生存率の上昇を認めた。⑤CRISPR-Cas9を用いて、CACNA1C SNP rs1006737のA/AおよびA/Gへ置換した細胞株の樹立化に成功した。しかし、オフターゲット効果の有無を確認することに時間がかかり、これらの細胞株を使った機能解析を十分に行うことはできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、以下の研究を行い、結果をまとめる予定である。 ①これまでの本研究において、CACNA1C、TRPC3、GSK3βの遺伝子間相互作用を見出した。mRNAレベルでの結果であるため、タンパクレベルでの解析も行い、上記遺伝子間相互作用を評価していく。 ②YKG-1細胞におけるLiClとH2O2の至適条件を同定することができた。この条件を用いて、酸化ストレス時におけるリチウムの効果およびCACNA1C、TRPC3、GSK3βの発現変動を確認していく。 ③CACNA1C SNP rs1006737のA/AおよびA/Gへ置換した細胞株を用いて、双極性障害のリスクバリアントであるCACNA1C SNP rs1006737A/Aの機能解析、特にIn silico上でSNP rs1006737 A allele (リスクバリアント)のみ予測された遺伝子X『転写調節領域を有した2つのエキソンからなる未知のNested gene 』の存在を、RACE法を用いて確認していく。
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Causes of Carryover |
mRNAレベルではあるが、CACNA1C、TRPC3、GSK3βの遺伝子間相互関係といった新しい知見を見出すことができたが、タンパクレベルでの解析は終了していない。また、CRISPR-Cas9を用いて、YKG-1細胞株におけるCACNA1C SNP rs1006737のA/AおよびA/Gへ置換した細胞株の樹立化に成功したが、より精度の高い細胞を得るために、セルソーティングとコロニーピッキング法を用いた。そのことにより、より純粋な細胞株を樹立化できたが、予想よりも時間がかかってしまった。加えて、新型コロナウイルス感染症拡大により、時間だけでなく、研究に使用不可欠な消耗品を手に入れることが困難であり、計画通りに研究を進めることができなかった。そのため、2021年3月19日 まで延長して、当初予定していた研究計画を遂行していく。
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