2019 Fiscal Year Research-status Report
海馬ドパミン・ノルアドレナリン入力バランス制御によるうつ病治療戦略の確立
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18K07614
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
首藤 隆秀 久留米大学, 医学部, 講師 (70412541)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西 昭徳 久留米大学, 医学部, 教授 (50228144)
外角 直樹 久留米大学, 医学部, 講師 (60368884)
黒岩 真帆美 久留米大学, 医学部, 助教 (20585690)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ドパミン / ノルアドレナリン / うつ病 / 抗うつ薬 / 海馬 / 歯状回 / 青斑核 |
Outline of Annual Research Achievements |
海馬歯状回は、うつ病の病態および抗うつ薬の作用発現に重要な脳部位であると考えられている。我々はこれまでに、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)フルオキセチンの抗うつ作用の発現には、歯状回の顆粒細胞特異的なドパミンD1受容体の発現増加が重要であることを報告している。また、歯状回にはドパミンD1受容体プロモーター活性の高い顆粒細胞が散在しており、これらの細胞特異的にドパミンD1受容体を過剰発現させると抗うつ作用が認められることを明らかにした。しかしながら、ドパミンD1受容体が増加した細胞の活性化が抗うつ作用を示すという直接的な証拠は未だ得られていない。そこで、Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs(DREADD)システムを用いて、マウスの海馬歯状回においてドパミンD1受容体プロモーター活性が高い顆粒細胞内シグナルの選択的活性化を行い、抗うつ作用を示すか否かを検討した。ドパミンD1受容体プロモーター下でCreを発現するD1-Creマウスの海馬歯状回にアデノ随伴ウイルスを用いて、合成リガンドのみで活性化される人工受容体(Gs-DREADD)を導入した。ウイルス注入4週間後に合成リガンドとしてクロザピンを腹腔内投与し、歯状回のドパミンD1受容体陽性細胞のGsシグナルを活性化させ行動解析を行った。その結果、不安の評価系とされる高架式十字迷路試験やうつ状態の評価系である尾懸垂試験において抗うつ作用や抗不安作用を示す結果が得られた。また、もう一つの不安の評価系である新奇環境摂食抑制試験では有意差は認められていないものの抗不安作用を示唆する結果が得られた。これらの結果より、海馬歯状回のD1受容体プロモーター活性の高い顆粒細胞の活性化が、抗うつ作用において重要な役割をもつことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウイルスベクターを用いて、海馬歯状回のドパミンD1受容体プロモーター活性の高い顆粒細胞選択的な活性化を行い行動解析を行っている。また、DREADDシステムにより海馬歯状回顆粒細胞非選択的に活性化を行う研究を予定しているが、この解析に用いる遺伝子改変動物(POMC-Creマウス)の繁殖も順調であり、おおむね計画通りに研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
海馬歯状回のドパミンD1受容体プロモーター活性の高い顆粒細胞の活性化が、抗うつ作用において重要であることを明確にするために、歯状回顆粒細胞の非選択的な活性化を行い行動解析を行う。海馬歯状回には、ドパミンD1受容体プロモーター活性の高い顆粒細胞、ドパミンD1受容体プロモーター活性の低い顆粒細胞、ドパミンD1受容体を発現していない顆粒細胞が存在している。海馬歯状回選択的かつ細胞の種類においては非選択的に人工受容体(Gs-DREADD)を導入するために、歯状回顆粒細胞特異的にCreを発現しているpro-opiomelanocortin (POMC)-Creマウスを用いた検討を行う。 近年、海馬の背側部はエピソード記憶や空間記憶の処理に、海馬の腹側部は不安や恐怖などの情動の制御に関与しているとの報告がある。したがって、歯状回のドパミンD1受容体プロモーター活性の高い顆粒細胞特的な活性化および非選択的顆粒細胞活性化の検討を、歯状回の背側部と腹側部とで個別に検討を行う。 2018年度に行った研究では、抗うつ効果に必要な海馬歯状回へのドパミン入力経路を特定する目的で、チロシン水酸化酵素(TH)細胞特異的にp11 を欠損したTH-Cre p11flox/flox マウスを用いた検討を行った。今後は海馬歯状回への入力経路のうち、ノルアドレナリン神経入力の役割をより詳細に解析するために、ノルアドレナリン作動性神経特異的にp11を欠損したDBH-p11マウスを用いた解析を行い、うつ病の病態および抗うつ薬の作用発現におけるノルアドレナリン神経と海馬歯状回との関連を解明する。
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Causes of Carryover |
試薬の投与量が少量で効果を示したことから試薬の消費量が抑えられたことと、研究機関にて繁殖させている遺伝子改変マウスを用いた検討を重点的に実施したことから、試薬購入とマウス購入の予定金額が残り、次年度へ繰り越しとなった。 必要消耗品にて使用する予定である。
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Research Products
(4 results)