2018 Fiscal Year Research-status Report
気分障害の原因となる視床室傍核特異的ミトコンドリア障害におけるMAOBの意義
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18K07615
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
窪田 美恵 (坂下美恵) 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 専門職研究員 (90344035)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島 康之 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 上級研究員 (60815885)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 酸化ストレス / ミトコンドリア / モノアミンオキシダーゼB / モノアミン / 気分障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
Maobノックアウトマウス、およびMaob flox/floxマウス(Creを発現する細胞のみでMaobがノックアウトされるマウス)をCRISPR/Cas9によるゲノム編集技術を用いて作成した。現在、Maob遺伝子の大規模欠損マウス、およびloxP配列が挿入されたMaob flox/floxマウスが作出できた。生化学的な実験、および、ノックアウトの確認実験のため、繁殖させている状況である。Maobノックアウトマウスにおいて、ドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなどのモノアミン、およびその代謝物の変化を観察するため、サンプリング方法を検討した。目的とする神経核はMAObを多く発現する縫線核、視床室傍核、および、それらの投射核である、側坐核、島皮質である。これらの領域について、同体積、かつ、より正確に神経核の摘出を行うため、マイクロウエーブ固定した脳を1-2 mm厚でスライスし、生体パンチにより摘出した。視床室傍核は、1匹当たり直径1 mmのパンチ1個分に相当し、その組織重量は約1mgであった。他のモノアミンが約20 ng/mgであるのに比べ、MAObの基質であるフェニルエチルアミンは20 pg/mg程度であり、非常に濃度が薄いことから、通常、モノアミンを測定する電気化学検出による高速液体クロマトグラフィーでは、感度が不十分である可能性が考えられた。よって、より感度良く測定可能な質量分析法を用いて、標品によるカラムの選定、測定条件を検討した。 将来的には、Maob flox/floxマウスを用いて、視床室傍核特異的にMaobをノックアウトする予定である。そのため、まず、GFP遺伝子を導入したウイルスベクターを作成し、適切な投与量、濃度、期間、注入方法について検討し、最適化した。 加齢に伴う酸化ストレスの変化を免疫組織化学的解析により検討するための条件検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画段階では、Maob flox/floxマウスを購入の予定であったが、個体での入手ができず、時間がかかることから、CRISPR/Cas9によるゲノム編集技術を用いて作成することとなった。にもかかわらず、順調に大規模欠失マウス、およびMaob flox/floxマウスを作出できた。また、脳内モノアミン測定についても測定法やサンプリング法の検討を行うことができた。ウイルスベクターの作成についても、試薬、装置の準備が整い、コントロールとして、GFP遺伝子による方法の検討を行うことができたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、Maobノックアウトマウス、Maob flox/floxマウスをさらに繁殖させ、以下の実験を計画している。 1)MaobノックアウトマウスにおけるMAOb遺伝子発現量の確認: 大脳皮質、線条体、海馬、小脳、脳幹、腎臓より、Trizolを用いてRNAを抽出し、逆転写によりcDNAを合成し、リアルタイムPCR法で定量的解析を行う。ベータアクチン、または18s rRNAなどのハウスキーピング遺伝子の発現量に対する相対的定量を行う。、 2)Maob遺伝子ノックアウトによる隣接した遺伝子への影響の確認(Maoa遺伝子、Ndp(Norrie disease pseudoglioma)遺伝子): 上記1)と同じ方法で行う。 3)Maobノックアウトマウスにおける脳内モノアミン量の定量: 質量分析法で測定可能であれば、質量分析法を使用する。モノアミン類とその代謝物では、化合物の性質が全く異なるため、同じ方法で測定できない可能性がある。また、脳組織を用いたときには、標品での測定感度より低下する可能性が高いことから、電気化学検出による高速液体クロマトグラフィーによる方法での検討も行う。脳組織に各標品を注入して測定する回収実験の結果により、最終的な測定方法を決定する。 4)視床室傍核特異的なノックアウトを行うための実験系の確立: Maob flox/floxマウスにウイルスベクターを投与した後の確認方法の検討を行う。視床室傍核は吻側から尾側まで広く存在する神経核である。免疫組織化学的な方法で、Maobの存在を確認する。灌流固定後の脳組織より切片を作成し、Maob抗体による染色を行い、野生型との比較によって、視床室傍核では陽性細胞数が低下し、縫線核においては陽性細胞が維持されていることを確認する。大規模欠失マウスにおいても、Maob抗体を用いた免疫組織化学的染色を行い、その違いを確認する。
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