2019 Fiscal Year Research-status Report
認知症の新たな発症メカニズムの解明と新規治療薬の創出
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18K07618
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
細川 雅人 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 主席研究員 (00435116)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | タウ / プリオン様伝播 / モデル動物 / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経細胞内で形成された異常タンパク凝集体が、プリオンのように伝播し、病理が広がるという「異常タンパク凝集体の脳内伝播仮説」が提唱され、認知症の発症メカニズムとして、徐々に知られるようになってきた。 タウ凝集体を脳内接種した動物モデルが多数報告されているが、いずれの動物モデルにおいても、十分にヒトの病理を再現できていないという現状がある。これまでに報告された異常タウ伝播の動物モデルでは、マウス脳におけるタウの発現パターンがヒトと異なるため、病理形成の再現が不完全であることが問題である。ヒトの成体脳では3R/4Rタウが1:1で発現しているのに対し、マウスを始めとする齧歯類は、成体脳では4Rタウのみが発現しており、アルツハイマー病(3R/4Rタウ両方が蓄積)やピック病(3Rタウのみが蓄積)の再現が不可能であった。 このような問題を克服するため、CRISPR/Cas9によるゲノム編集技術を用いて、ヒトタウと同様に内在性の3R/4R両方のタウ(6アイソフォーム)を発現するマウスを作製し、このマウス(Tau 3R/4R)の脳内へ、タウオパチー患者脳由来不溶性画分を接種した。一定期間経過後に免疫組織化学的解析および生化学的解析をおこなった。その結果、マウスで初めて3R/4R両方のタウが蓄積するアルツハイマー (AD) 型タウ病変を再現できたと考えられた。また、AD以外のタウオパチー患者脳から抽出したタウ凝集体を含む不溶性画分をTau 3R/4Rマウス脳に接種し、ADとは異なる病態特異的な病理の形成を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異常タウを脳内に接種後、3, 6, 9か月経過したマウス脳の採材が終了し、組織化学的検討が終了しつつある。接種部位から蓄積部位への伝播の位置関係が解剖学的に明らかになりつつある。病態特異的なタウ(AD: 3R+4Rタウ、PSP, CBD: 4Rタウのみ、PiD: 3Rタウのみ)が蓄積することを生化学的、免疫組織化学的に確認できた。計画通り順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
タウオパチー患者由来の不溶性画分を接種したマウス脳から異常タウを抽出し、電子顕微鏡写真を撮影する。異常タウの構造にどのような違いが現れるかを確認する。さらに詳細な組織化学的検討をおこない、それぞれのタウオパチーに特徴的な病理像が再現されるかを確認する。また、蓄積したタウのアイソフォームをイムノブロットにより調べる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2020年3月に予定されていた日本薬学会、日本薬理学会、研究打合せが中止になり、旅費として計上していた経費が残った。この費用は次年度の学会旅費および消耗品購入に充てる予定である。
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