2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K07633
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
依田 哲彦 大阪大学, 核物理研究センター, 講師 (30372147)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | RI生成 / PET薬剤 / イオン源 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では核融合反応3He+D→p+4Heにより生成する大強度の陽子を利用したRI生成によって、サイクロトロン等の加速器に代わる、PET用RI生成装置の実現可能性を模索するものである。本研究の大きな柱は「Heイオン源の大強度ビーム開発」と「重水素標的の最適化」の2つとなる。 今年度は「Heイオン源の大強度ビーム開発」を中心に研究開発を実施した。 研究対象であるRI生成装置は、真空層内に設置された重水素(D)標的に、イオン源で発生させた3Heビームを標的に照射し、核融合反応の結果発生する陽子を利用する。本装置で作られるRIの収量ができるだけ多くなるよう、核融合反応の結果出てくる陽子の量を多くするためには当然ながら標的に照射する3Heビームの量を増やす必要がある。 ビームを増やす方策として、チャイルド―ラングミュア則により電圧を上げることによりビーム電流の増強が期待されるため、ビームの加速電圧を15kVから50kVに増やすことを実施した。これは、加速された3Heビームのエネルギーの増大に伴って件の核融合反応断面積の増大も桁違いに起こるため二重の意味で重要な改変である。この改変は既存のイオン源に対し、絶縁材の見直しや放電の起こりにくい構造への修正という形で実施され、この結果安定的に50kVの電圧印加が可能となった。 これに並行して「重水素標的の最適化」について、真空中でTi蒸着膜に重水素を吸着させるタイプの重水素標的の新規設計検討を行った。この新しい標的はマイナスに電圧を印加できるように工夫することで、相対的に3Heビームエネルギーをさらに向上させることが可能なように設計されている。 今後は、この新しく設計された標的を製作し、上記のとおり増強された3Heイオンビームを照射する。そして、陽子の生成率や実際にRIが生成可能かの試験を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PET用RI生成装置の実現可能性を模索するためには「Heイオン源の大強度ビーム開発」と「重水素標的の最適化」という2つの大きな柱が研究の中心となるわけだが、このうち「Heイオン源の大強度ビーム開発」について、60%程度の進捗があったことになる。また「標的構造の最適化」についても新しいアイデアを導入することで、全体の目標に対して70%程度の進捗まで到達したと考えられる。あとは実際に機器を製作して、RI生成の検証を行うのみというところまで進んでいるため、進捗状況はおおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
PET用RI生成装置の実現のための研究の大きな2つの柱「Heイオン源の大強度ビーム開発」と「重水素標的の最適化」について、イオンビームの強度については一通りのめどが立ちあとは実際のビームを生成するだけの段階である。ビームの照射にあたってはビーム光学系とモニター系を駆使して確実に標的にビームが当たるよう、研究を進めていく必要がある。これについては、既存のビーム輸送系を利用することで、問題なく実施できる見込みである。 重水素標的については、当初重水素化ポリエチレンを利用することを中心に研究を進めていたが、熱変形の問題に対する効率的な冷却構造の実現が想定以上に困難であることわかったので、Ti蒸着膜への重水素蓄積の方法を中心に研究を進めることに方針を転換した。このTi蒸着膜のベースを例えばNiの薄膜を使えばNi(p,n)Cu反応によるRI生成の検証も容易にできるため、好都合であり、RI生成装置の実現性に対して良好な結果が期待できる。
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