2018 Fiscal Year Research-status Report
リスク臓器線量及び装置の物理干渉を考慮した全方位照射空間における照射軌道の最適化
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18K07650
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Research Institution | Kyoto College of Medical Science |
Principal Investigator |
澤田 晃 京都医療科学大学, 医療科学部, 教授 (80543446)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森山 真光 近畿大学, 理工学部, 准教授 (00283953)
石原 佳知 日本赤十字社和歌山医療センター(臨床研究センター), 放射線治療科部, 医学物理係長 (60709351)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 動的照射軌道 |
Outline of Annual Research Achievements |
強度変調放射線治療は固定型から回転型へと拡張されている。また、治療装置と周辺機器の位置姿勢により全方位からの照射可能な放射線治療装置が開発され、それに伴い、治療装置と周辺機器の自由度を活かした動的な3次元回転照射法の開発と臨床応用が進んでいる。上記のように、高精度放射線治療は従来の固定多門照射から照射空間の自由度を活かした回転照射へと進みつつある。しかし、照射空間の高い自由度の中から最適な照射軌道を決定するアルゴリズムは検討されておらず、現状では試行錯誤で最良な照射軌道を求めている。本研究では、治療ビームの幾何学的な通過の有無や累積線量を指標として、正常組織への照射を抑制する回転照射軌道を自動的に計算する手法を開発している。本年度は、危険度マップの自動生成ソフトウェアを実装した。更にAスターアルゴリズムを用いた照射軌道計算アルゴリズムの考案とソフトウェアを開発し、動画による照射軌道の可視化を行った。また、肺ファントムのCTデータを用いて、導かれた照射軌道の線量評価を試みた。関連研究の学会発表として、本研究で用いる治療装置を用いた強度変調放射線照射に動体追尾機能を加えた治療(追尾IMRT)に関して、フィルム測定およびログ解析により追尾IMRTにおける動作中の照射ヘッド機械的誤差,照射位置および線量分布精度を検証した。そして、ガンマパス率が、(周期,振幅)=(5 s,30 mm)以外の条件下で95%以上、また、最大約1.6 mmの位置誤差が施設のターゲットへのマージン以下であり、追尾IMRTは高精度に実現できていることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、腫瘍へ全方位から外部照射できるダイナミックウェーブアーク(以降DWA)に対応している治療装置 Vero4DRTを対象装置として実験を行った。そして、本年度は肺ファントムをCT撮影し、脊髄を危険臓器として輪郭描出且つその周辺に直径20 mmの模擬腫瘍を設定したファントムモデルを生成した。DWAの照射経路については、照射ビームと各危険臓器の表面との交差の有無を危険度としてカウントした値をデータとして持たせたマップを生成し、ゲーム等で使用されているAスターアルゴリズムを用いて危険度が最小となる経路を、幾何学側面における最適経路候補とした。次に、この経路候補が線量側面において経路を評価する方法を考案した。その一つとして、本来、線量分布は経路が定まった後に計算されるものであるが、本研究では、立体角4π(sr)について幾つかサンプリングした方向からの照射ビームに対する線量分布を予め計算しておいた。そして、この線量マップを用いてDWAの照射経路における線量分布を簡易計算し評価した。ただし、照射経路は1度毎に計算してはいるが、線量計算コストを考慮して線量マップを5度毎で計算しているため、経路に対する最近傍の点に対応する線量値を近似値とした。線量分布から、高線量が腫瘍に当たり、危険臓器としての脊髄への照射が抑制されていることを確認した。また、DVHを作成したところ、GTVへは100%線量を保ちながら、脊髄の線量を抑制できていることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終的な照射軌道の良否は線量分布や線量指標に基づいて判断されるため、照射ビームと正常組織との幾何関係に加えて、治療ビームが通過する各臓器の累積線量および線量指標を求める。今年度は肺ファントムを用いた実験を行ったが、各方向からの線量の合算において高線量領域のズレが生じた。これが、肺野の不均質に起因するものか、合算アルゴリズムによるものかを明らかにする。また、危険臓器が少ないため、頭頚部ファントムを用いた実験を検討する。各照射方向からの事前線量分布の作成は、計算コストと計算精度のいずれも高いが、スーパコンピュータとモンテカルロ法を組合わせ、時間と精度のバランスを考慮した線量計算を検討する。
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Causes of Carryover |
先行して開発していた照射経路ソフトウェアに関する評価を優先させ、3次元デジタイザを用いた実験を次年度に変更したため。
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