2018 Fiscal Year Research-status Report
微細周期構造形成による放射線検出用蛍光体の高性能化を目指した基礎研究
Project/Area Number |
18K07664
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
三浦 健太 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (40396651)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 微細周期構造 / 蛍光体 / 光取り出し効率 / スパッタ / 干渉露光 |
Outline of Annual Research Achievements |
医療分野で癌の診断などに用いられる陽電子放射断層撮像法(PET)の研究開発では,次世代型のTOF(Time of Flight)-PETが注目されており,TOF-PET用シンチレータとして,Lu2SiO5:Ce (LSO)結晶が多く用いられている。本研究では,簡便かつ高スループットが期待できる,二光束干渉露光法を含んだ独自の作製プロセスを用い,ミクロンオーダーの周期を持つ微細周期構造をLSOシンチレータ結晶の表面に形成することで,放射線照射時に発生する蛍光の,結晶内部での全反射の抑制を試みる。これにより,シンチレーション検出器の光センサーへの蛍光の到達光量や到達時間の改善が見込まれ,LSO結晶を用いたシンチレーション検出器の時間分解能の向上が期待できる。即ち,本研究の目的が達成されれば,TOF-PETの診断画像の画質の向上につながり,薬剤投与量の削減や検査時間の短縮,感度及び特異度の向上が期待できる。 今回は,LSOに見立てた発光材料として,酸化亜鉛(ZnO)薄膜(膜厚約1μm)をSi基板上にスパッタリング法で成膜し,更にその試料の表面に,簡便な二光束干渉露光法およびリフトオフ法を組み合わせた独自のプロセスにより,ZnOスパッタ膜からなる一次元微細周期構造(周期:約1.4μm)を,凹凸の深さ約100nmとして形成した。この微細周期構造の効果を確認するため,作製した試料のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを,励起光源としてHe-Cdレーザー(波長325nm)を用いて測定したところ,微細周期構造の有無にかかわらず波長400~420nm付近に発光ピークが観測され,微細周期構造が有る場合は,無い場合に比べ,観測される発光ピーク強度が約1.7倍に向上することを確認できた。即ち,微細周期構造の付与により,ZnO薄膜表面と空気との界面における全反射を抑制できることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二光束干渉露光法を用いた微細周期構造作製プロセスにおいて,従来,リフトオフ法の適用は難しいとされていたが,フォトレジストの厚さや露光条件(露光強度及び露光時間),ZnOスパッタ膜の膜厚などを最適化することでこれを実現した点が大きな進展である。その一方で, LSO結晶の表面に付与するためには,数cmの面積で微細周期構造を均一に形成する必要があるが,均一性については不十分であることも確認しており,その点が新たな課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように,LSO結晶の表面に微細周期構造を付与するための均一性が,現時点では不十分である。今後,その課題を解決すべく,作製プロセスの最適化を進めていく。更に,LSO結晶の表面への微細周期構造の形成を試みるとともに,実際にLSOシンチレーション検出器の光センサーへの蛍光の到達光量や到達時間が改善されるか検証していく予定である。
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