2019 Fiscal Year Research-status Report
微細周期構造形成による放射線検出用蛍光体の高性能化を目指した基礎研究
Project/Area Number |
18K07664
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
三浦 健太 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (40396651)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ZnO / Zn / 共スパッタ / 赤色発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
ZnOは,ワイドバンドギャップ(3.37eV)を持つ酸化物半導体であり,透明導電体としての応用が検討されている。一方で,発光材料としてもよく知られており,その生体親和性から,シンチレーターとしての応用も期待されている。ZnOからは,主にバンドギャップによる紫外発光(波長380nm付近)と,酸素欠陥等による緑色発光(波長550nm付近)を得られることがわかっているが,今回は,共スパッタ法で成膜したZn過剰ZnO(以下ZnO:Zn)薄膜から,顕著かつ特異な赤色発光帯を観測した。 高周波(RF)スパッタリングを用いてZnO:Zn薄膜の成膜を行った。基板には溶融石英板を用い,スパッタリングガスとしてArを26sccm,H2を4sccmの流量で真空チャンバ内に導入した。RF電力は75Wに設定し,膜厚が1μmになるようにスパッタリング時間を設定した。成膜の際,ZnOターゲット(直径100mm)上に複数のZnワイヤー(1mm径)を対称に置き,共スパッタによりZnの添加を行った。また,発光特性の比較を行うため,成膜時に使用するZnワイヤーの量(一本あたりの長さ及び本数)を変えた試料を複数準備した。次に,成膜したZnO:Zn薄膜のアニール処理(450℃,6時間)を行った。その後,試料のフォトルミネッセンス(PL)特性の評価を行った。励起にはHe-Cdレーザー(波長325nm)を使用した。 試料のPLスペクトルの測定およびガウシアンフィッティングを行った結果,Znを過剰に添加することによって,波長570nm付近の緑色~黄色発光帯に加えて波長650nm付近および750nm付近の2つの赤色発光帯が観測され,共スパッタ法で成膜したZnO:Zn薄膜においては,3つの発光帯が存在することを確認できた。これらの発光帯は,Znを過剰にしたためにZnO:Zn薄膜中に形成された欠陥準位に起因するものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回は,ZnO薄膜に対して共スパッタ法でZnを追加することにより,ZnO:Zn薄膜を成膜して3つの発光帯が存在することを確認できた。生体親和性が比較的高くシンチレーターとしての応用が期待できる,ZnO薄膜の新たな発光特性の開拓に成功したと言えることから,本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
共スパッタ法で成膜したZnO:Zn薄膜から観測された3つの発光帯は,Znを過剰にしたためにZnO:Zn薄膜中に形成された欠陥準位に起因するものと思われる。それを検証するために,ZnO:Zn薄膜の透過スペクトルの測定データをTaucプロットしたところ,ZnO:Zn薄膜のバンドギャップエネルギーは3.45~3.55eVと推定された。今後は,3つの発光帯の起源となる欠陥準位の特定を試み,そのバンドギャップエネルギーとの関連性も調べることによって,ZnO:Zn薄膜のエネルギー準位モデルを確立すべく研究を継続していく予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Evaluation of scintillation properties of α- and β-SiAlON phosphors under focused microbeam irradiation using ion-beam-induced luminescence analysis2019
Author(s)
W. Kada, I. Sudic, N. Skukan, S. Kawabata, T. Satoh, J. Susaki, S. Yamada, T. Sekine, R.K. Parajuli, M. Sakai, K. Miura, M. Koka, N. Yamada, T. Kamiya, M. Jaksic, and O. Hanaizumi
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Journal Title
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B
Volume: 450
Pages: 157-162
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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