2018 Fiscal Year Research-status Report
ポルフィリン前駆体による悪性脳腫瘍に対する新規放射線増感治療の開発
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18K07690
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
川田 哲也 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 共同研究員 (60234077)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三島 一彦 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (00282640)
公田 龍一 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (00464834)
深田 淳一 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50338159)
小池 直義 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60464913)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | グリオーマ / 放射線増感剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性グリオーマ摘出術において蛍光診断薬として用いられる5-aminolevulinic acid (5-ALA)は、その代謝物である細胞内のヘム代謝系酵素であるプロトポルフィリンⅨ(PpIX)が腫瘍細胞内に特異的に蓄積能を有することを利用している。5-ALAは診断用薬剤として既に臨床使用されているため、脳腫瘍に対する移行性・集積性は十分な裏付けと実績がある薬剤であり、本研究は「安全性・脳腫瘍集積性が確立された既存薬剤において放射線増感効果を有するものはあるか」という問いに端を発して既存薬再開発として脳腫瘍細胞における5-ALAの放射線増感剤としての薬効を証明し、その機序を解明することにより新規薬剤開発に繋がるような知見の発見を目的とする。 本年度の研究実積として、5-ALAをヒト悪性グリオーマ培養細胞株U251,LN229, LN428に投与した後に照射を行い、コロニー法により5-ALAの放射線増感効果を検討した。その結果、5-ALA 投与後の照射では、5-ALA投与を行わない照射単独に比べコロニー形成能が抑制されることが示され、In vitro において5-ALAは放射線増感作用をもつことが確認された。しかしながら5-ALAと放射線照射の併用がどのような機序で放射線増感作用に影響を及ぼすかはこれまでに明らかにされておらず、5-ALAの放射線増感剤としてのメカニズムはまだ不明な点が多く残されている。そこで我々は照射と5-ALAの併用による抗腫瘍効果の機序として、細胞周期について検討した。その結果、5-ALAと照射併用では、5-ALA単独、照射単独に比較し、G2/M期に細胞周期が集積する傾向が確認された。この結果は5-ALAは悪性グリオーマ細胞に対して有効な放射線増感剤となりうる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず悪性ヒトグリオーマ細胞株U251,LN229, LN428の細胞生存率をコロニー法で検討した。その結果、5Gy単独の照射では生存率60%以上を各細胞株が示したことより、以下の実験では照射線量は5Gyを用いた。 5-ALAは1mM濃度に調整し細胞生存アッセイ法に使用した。96wellのプレートを用い各wellに5000個の悪性ヒトグリオーマ細胞株U87, U251, LN229を培養し、1 mM の5-ALAで4時間処理後、CCK-8 assayキット (Dojindo, Kumamoto, Japan)を用いて生細胞の測定を行った。その結果、細胞株U87, U251, LN229ともに5-ALAが細胞に与える影響は非常に低かった。 予備実験によって得られた情報とコロニー法の結果をもとに、5-ALAを1 mM濃度に調整し、ヒトグリオーマ細胞株U87, U251, LN229に4時間作用させた。その後放射線5Gyを照射し37度で培養し、14日培養した後コロニー形成能を検討した。5-ALA投与を行わない照射単独に比べコロニー形成能が抑制された。以上よりIn vitroにおいて5-ALAは悪性ヒトグリオーマ細胞株に対し放射線増感作用を持つことが確認された。 PI法によりフローサイトメーターで細胞周期を解析した。10cm dishに悪性ヒトグリオーマ細胞株U87, U251, LN229を培養し、5-ALA (1 mM)を投与し4時間後5Gyで照射し24時間後に細胞を固定しサンプルとした。結果、5-ALAと照射併用により、5-ALA単独、照射単独に比較し、G2/M期に細胞周期が集積する傾向を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
10cm dishに悪性ヒトグリオーマ細胞株U87, U251, LN229を培養し、5-ALA(1 mM)を投与し4時間後に5Gy照射し24時間後にAnnexin V-PI染色しフローサイトメーターによるアポトーシスの解析を行う。次に悪性ヒトグリオーマ細胞株に対する照射後TUNEL法を行なう。5-ALAと照射の併用は5-ALA単独投与、照射単独と比較し、アポトーシスを検出する。 5-ALAの悪性グリオーマ細胞株に対する放射線増感作用の分子メカニズムを解明する目的で、細胞死や生存の重要なシグナル分子であるAKT, PARP, Caspase3の活性化状態を免疫ブロット法で検討する。また、5-ALA添加の有無により、放射線照射後のグリオーマ細胞のDNA損傷の程度の違いを比較する目的で、核内のリン酸化γH2AXの発現量を細胞免疫染色、免疫ブロット法で検討する。 6週齢のBALB/cnu/nu雌マウスの背部皮下に1x106個/50μlの悪性グリオーマ細胞を移植し皮下腫瘍モデルを作成する。使用する細胞は実験1の結果を参考にして決定する。作成した悪性グリオーマ皮下腫瘍モデルを用いて、無治療群、放射線治療単独群、5-ALA単独投与群、5-ALA+放射線治療群の4群間の腫瘍量の変化を継時的に比較する。悪性グリオーマ皮下移植後5日目に5-ALA投与と放射線治療を実施する。5-ALAはマウスの体重に応じ腹腔投与を行い、放射線治療は5-ALA投与4時間後に麻酔沈静下に実施する。経時的に腫瘍径を測定し、 無治療群の腫瘍量を指標にして屠殺時期を決定し、腫瘍重量を計測する。
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Causes of Carryover |
消耗品等の消費の関係によりわずかに余剰金が生じた結果と考える。余剰金は次年度消耗品費に組み込み使用する予定である。
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