2020 Fiscal Year Research-status Report
癌放射線治療における稀で重篤な正常組織障害発症例のゲノムシーケンス解析
Project/Area Number |
18K07696
|
Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
今井 高志 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, QST病院, 室長(任常) (50183009)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 放射線治療 / 正常組織障害 / 遺伝子多型 / 乳がん / 前立腺がん / 排尿障害 / 有害反応リスク / ゲノムシーケンス |
Outline of Annual Research Achievements |
私達は、がん患者血液細胞のin vitro放射線感受性は、がんの種類によって異なっていて、特に乳がん患者ではin vitro放射線感受性が高い患者が多いことを以前に報告している。最近数千人規模のがん患者コホートを用いた生殖系細胞ゲノムのGWAS(genome wide association study)が実施され、がんの易罹患性に関わる遺伝子多型が数多く報告されてきたことから、これらの遺伝子多型とがん患者の放射線感受性、即ち本研究では放射線治療における正常組織障害、との関連性について検討した。 乳がんではDNA損傷修復遺伝子、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、WNTシグナル伝達経路、分裂促進因子活性化プロテインキナーゼ遺伝子(MAP-ERK1/2)、AP-1転写因子、NFkBシグナル伝達経路などに属する遺伝子の多型ががん化と関連していることが報告されている。これらの遺伝子の中には機能面から放射線感受性にも関わると考えられている遺伝子が含まれている。そこで、本研究においてこれまでに解析した乳がん患者で放射線治療後に皮膚障害を発症した患者のゲノム配列について、乳がんの易罹患性に関わる遺伝子に焦点を当て、多型データを抽出して機能との関連性に注目し、解析中である。 また、前立腺がんにおける生殖系細胞ゲノムのGWASでは、ホメオボックスタンパク質HOXB13、マイクロセミノタンパク質MSMBの遺伝子多型が前立腺がんの易罹患性と関連していることが報告されている。これらの多型と前立腺がん放射線治療における有害反応のひとつ、排尿障害との関連性を解析した。その結果、これらの遺伝子多型と放射線治療後の排尿障害リスクとの統計学的関連性は見られなかった。したがって前立腺がんの易罹患性に関わる遺伝子多型と放射線感受性に関わる遺伝子多型が重複する確率は低いと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
重篤な正常組織障害発症例のゲノム解析をさらに進めるため、解析方法の変更を試料提供施設の倫理委員会に申請したが、承認を得るために予想以上の日時がかかった。また、新型コロナの影響でシーケンスに必要なプラスチック器具の入手に時間が必要となり、これらのことから、年度中に十分な実験を行うことはできなかった。しかしながら、本年度はin silicoでの解析を進め、がんの易罹患性に関わる遺伝子多型情報を公開データベースから収集し、これまでに取得したゲノム配列データの再解析を進めることができたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
未解析のがん患者における全エクソンシーケンスを実施し、重篤な正常組織障害を示した患者に特有の遺伝子多型の検出、公共データベースを用いた一般集団の多型頻度との比較を行い、研究のまとめを行う。
|
Causes of Carryover |
主にゲノムシーケンスに関わる費用を計上していたが、解析方法の一部変更に関して、患者登録機関での倫理委員会承認が必要となった。この承認に予想外の日時がかかり、またシーケンス解析に必要なプラスチック器具の新型コロナ禍による国内在庫不足のため納入に時間がかかるなど実験のスケジュールが遅れた。このため、費用を繰越し次年度にゲノムシーケンス解析することとした。
|
Research Products
(2 results)
-
[Journal Article] Individual response of humans to ionising radiation: governing factors and importance for radiological protection2020
Author(s)
K. E. Applegate, W. Ruhm, A. Wojcik, M. Bourguignon, A. Brenner, K. Hamasaki, T. Imai, M. Imaizumi, T. Imaoka, S. Kakinuma, T. Kamada, N. Nishimura, N. Okonogi, K. Ozasa, C. E. Rube, A. Sadakane, R. Sakata, Y. Shimada, K. Yoshida & S. Bouffler
-
Journal Title
Radiation and Environmental Biophysics
Volume: 59
Pages: 185-209
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-