2018 Fiscal Year Research-status Report
副作用が懸念される薬物の腎尿細管分泌機序の解明と新規腎機能核医学画像測定法の開発
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18K07747
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小林 正和 金沢大学, 健康増進科学センター, 助教 (30444235)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川井 恵一 金沢大学, 保健学系, 教授 (30204663)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 核医学 / SPECT / 薬物トランスポータ / 腎臓 |
Outline of Annual Research Achievements |
腎臓は、投与薬物の排泄臓器として重要な役割を果たしており、正確な腎排泄機能の測定は臨床上重要である。MRI・CT造影剤や白金系抗がん剤等のように比較的分子量が大きく、高い投与濃度の場合、投与薬物が糸球体濾過と近位尿細管から分泌されるが、尿細管分泌機序や尿細管上皮細胞集積性が十分に解明されていない。本研究では、臨床で副作用が問題となっている薬物の近位尿細管分泌機序と尿細管上皮細胞集積性を解明する。さらに、臨床では投与薬物の副作用発生を回避するため、薬物投与前に糸球体濾過量を主に反映している血清クレアチニン測定を行っているが、糸球体濾過量が正常であっても、近位尿細管膜上の薬物トランスポータの発現量や活性が低く、尿細管分泌量が低下している高齢健常者や患者では副作用が生じやすい。そこで、現状の腎機能測定法では、測定困難な近位尿細管分泌量を正確かつ特異的に定量測定可能な核医学画像測定法の開発を目指す。 申請者は、初めに現在臨床使用されている放射性医薬品とMRI・CT造影剤の腎排泄機序を解明することから研究を開始した。腎臓において代表的な管腔側薬物トランスポータ単一強制発現ベシクルを用いて、腎機能測定用核医学画像診断薬[99mTc]MAG3における薬物トランスポータの親和性を検討したところ、様々存在する薬物トランスポータの中でmultidrug resistance-associated protein(MRP)2とMRP4の親和性が確認できた。つまり、[99mTc]MAG3はMRP2とMRP4を介して尿細管分泌されていることを解明した。今後、実験動物等において、[99mTc]MAG3とMRP2とMRP4の関係性を調査する予定である。今後は、他の核医学画像診断薬やMRI・CT造影剤の腎排泄機序を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
腎機能測定用核医学画像診断薬[99mTc]MAG3の尿細管分泌機序を検討した結果、様々存在する薬物トランスポータの中でMRP2とMRP4の関与を発見したが、本研究を開始するための準備に時間がかかったため、本研究の進展はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、副作用が懸念されるMRI・CT造影剤や抗がん剤等の薬物の近位尿細管分泌機序及び尿細管上皮細胞集積性の解明と、現状の臨床用核医学画像診断薬では評価困難な尿細管膜上の薬物トランスポータ機能の測定が必要な場合には、当該腎機能を正確かつ直接的に測定可能な新規放射性薬剤の開発を行う。平成30年度には、腎機能測定用核医学画像診断薬[99mTc]MAG3の尿細管分泌機序を検討した結果、[99mTc]MAG3はMRP2とMRP4を通じて分泌されることを発見した。今後も、現状の臨床用核医学画像診断薬、MRI・CT造影剤や抗がん剤等の尿細管分泌機序と細胞集積性を解明する。これらの結果から、当該薬物の副作用発生の一因となっている主要な尿細管分泌機序を見出し、臨床用核医学画像診断薬を用いて、副作用が懸念されるMRI・CT造影剤や抗がん剤等の薬物の近位尿細管分泌機序及び尿細管上皮細胞集積性を評価困難な場合には、米国のテキサス大学MDアンダーソンがんセンター、National Institutes of Healthとスタンフォード大学の協力の下、新規放射性薬剤を開発する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、本研究に使用する一部の管腔側薬物トランスポータ単一強制発現ベシクルに関して、平成30年度に購入予定であったが、平成31年度に購入するように変更したためである。したがって、平成31年度の研究費の使用計画として、平成30年度未使用額と平成31年度の配分額を合算し、物品費として、薬物トランスポータ単一強制発現ベシクルと溶液、試薬、放射性薬剤、CT・MRI造影剤及び実験器具等を購入する。また、国内・国外の共同研究施設への出張、英語論文校正や論文投稿料等にも使用する予定である。
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